メッセージ
Last Update : 2008/06/13 
<<メッセージ一覧に戻る

洞爺湖サミット(G8)で地球温暖化対策は前進するのか?

G8サミットの歴史的役割

  G8サミット(主要国首脳会議)の歴史を見ると、「先進8カ国首脳」の勝手な会議であるにもかかわらず、WTO(世界貿易機構)やFTA(自由貿易協定)等を用いて、世界経済を牛耳り、弱肉強食の新自由主義を各国に押し付けてきました。

  途上国に対しては、債務やODAを背景に貿易の自由化、公共部門の民営化、労働・雇用の規制緩和、警察国家化を強要しています。

  先進国でも、雇用は不安定化し、格差や貧困が深刻化し、福祉政策は切り捨てられ、社会的弱者は排除され、基本的人権が脅かされてきました。

  環境問題でも、京都議定書に米国は反対し、日本は消極的でした。

なぜ、EUから批判されるのか

  こうした歴史を見るとき、2008年 7月に開催される洞爺湖サミットで、地球温暖化から地球と人類の未来を救う具体的な目標が設定できるのか。議長国として日本は責務を果たせるのか、世界の注目が集まりだしているときだけに、政治・政府の責任と問いたいと思います。

  福田政権は、温室効果ガス削減の2020年までの中期目標も示せず、2050年までの長期目標を「福田ビジョン」として提出しようとしています。長期的で大幅な削減のためには、その通過点としての中期目標を明らかにして、着実に削減していくことが求められます。

  この中期目標設定に対して、イギリスのベン環境相は「世界で第2の産業革命を起こさなければならない」「中期、長期の目標を共に設定しなければならない。目標なしに取り組みは進まない」。ドイツの政府代表も「先進国が2020年までに25〜40%削減するという中期目標に合意しなければ、世界の削減目標は達成できない」と厳しく指摘しています。

  神戸で開催されたG8環境相会合でも、長期目標だけでなく、中期目標が求められながら、日本政府が主張したことは、業種や分野(セクター)ごとに可能とされる削減量を積み上げて中期目標とするとの「セクター別アプローチ」の固執でした。そのために、科学的に必要な削減レベルとの間のギャップを「埋める必要がある」と、議長総括でクギを刺されるありさまでした。経団連の「セクター別アプローチは当然」を政治の責任・政府の責任で中期目標を作ることです。

  京都議定書によれば、日本は温室効果ガスを1990年比で6%削減しなければならないにもかかわらず、第一約束期間が始まったところで、逆に6・2%も増やしてしまっています。ヨーロッパでは、ドイツが18・6%、イギリスが14・8%、EU全体でも27カ国で7・9%減らしているのです。

議長国としての責任を

  日本政府と産業界は、気候変動の重大性についての科学的到達点や知見を緊迫感・切迫感を持って認識していません。ところが、EUでは、人類が生き延びるためには、早く手を打たなければとの思考と長期的な視点で判断をし、ルールをつくっています。経済界が反対でも、政治の責任・政府の責任で実行可能なルールを作り、協力を求めています。

  福田政権は、議長国としての役割を果たすために、地球温暖化対策で、2050年に世界で1990年比の温室効果ガスを半減させる、先進国はさらに削減をさせる長期目標と、その目標を実現させるための中期目標を提起し、実行しなければなりません。

  ところが、福田首相は9日の記者会見でも、排出量取引や環境税に言及したものの、中期目標を設定し、抜本的な政策転換の方向性を示せませんでした。

  福田首相は、議長国としての責任を取るべきです。ブッシュ政権や経団連の御用聞きでは政治の責任を果たせないことを自覚すべきです。

  それができない政権は、国民に信を問うことです。


2008.06.13 - 吉野 信次 -    
上に戻る