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Last Update : 2008/02/06 
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中国製ギョウザ事件から学ぶ
〜 輸入食品の検査体制を抜本的に強化すること 〜

  「コープの店頭で購入した中国製ギョウザによって、農薬被害者が重体」このニュースを聞いたとき、食の安全・安心が根底から崩れていったことを実感し、すぐに加入している生協(生活クラブ)に問合せをした一人です。

  重体者を含む10名の有機リン系農薬中毒被害を引き起こした中国製ギョウザ事件は、日本列島に大きな衝撃を与え、食の安全・安心に警鐘を鳴らしています。健康被害の申告数は3日現在 2,107人 にも及んでいます。

  この事件は、その規模の大きさだけでなく食の安全に最も関心が高いはずの生活協同組合を巻き込んだ事件だけに、かつてない事件となっています。

ズサンな輸入食品検査体制・検査率10%

  現在、原因の究明が日中両政府の努力で進められていますが、原因の解明には、まだかなりの時間がかかりそうです。この事件が、故意に農薬メタミドホスやジクロルボス等を投入されたとして、食品検疫で輸入をストップさせることができたでしょうか。

  日本には食品衛生法があり、この法に適合している食品だけが輸入されることになっています。この適合かどうかは、輸入食品を検査しなければ分かりません。ところが、港や空港の検疫所で食品検疫に従事している食品衛生監視委員は、全国でたった 334人 しかいないのが現状です。

  日本の食品輸入件数は、2006年で年間 185万9,000件 にも達し、1990年の 67万9,000件 に比べて、3倍近くにも増大しています。輸入件数の伸びに監視員の人員増が全く追いつかないために、現在の輸入食品の検査率は 10% 程度に止まっています。つまり、輸入食品の9割が無検査で国内に入ってきています。

モリタリング検査でなく、検疫検査を!

  さらに、現在、すべての食品は、残留農薬基準が設定されています。輸入加工食品もコーデックス基準(国際基準)で定められている加工食品と、冷凍野菜のような原材料が分かるものを除けば、一律 0.01ppm の残留農薬基準が定められています。この基準に基づき検査すべきですが、厚労省は検査を一切してきませんでした。国がおこなっている検査はモリタリング検査で、検査結果が出るまで輸入を止める検疫検査ではなく、輸入流通を止めない検査だけです。

  現在の輸入食品検査体制では、今回の事件は防ぎ得なかったことになります。食料自給率が 39%、食料の6割以上を輸入に依存している食料輸入大国が、このような貧弱な輸入検査体制でよいわけがありません。

食品衛生監視員を大幅に増員し、二度と同じ事件を発生させないこと

  今回のギョウザ事件を契機に、輸入食品の検査体制を抜本的に強化することが求められています。最低でも 10% の現状を 50% 以上に引き上げることです。そのためには、食品衛生監視員を現行の 334人 から飛躍的に増員することです。さらに、モリタリング検査を検査結果が出るまでは、輸入を留め置く、食品検疫にふさわしい行政検査を実行することです。参院予算委員会での質疑で、福田首相は「輸入食品の安全性が確保されるように、人的体制を含め輸入時検査のあり方について研究したい」と表明しています。二度とこのような事件が発生しないことを福田政権に求めていきましょう。


2008.02.06 - 吉野 信次 -    
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