| 貧困の拡大・生活保護基準の引き下げは許せない! |
厚生労働省は「低所得世帯の消費実態との均衡」を理由に来年度から生活保護基準を引き下げる方針を表明しました。人間らしい暮らしができない貧困層を大量に生み出し、放置しておきながら、それを理由に「低い方に合わせるべきだ」という卑劣なやり方は絶対に許せません。
▼深刻な影響が
生活保護基準が引き下げられれば、地方税の非課税基準、介護保険の保険料・利用料や障害者自立支援法による利用料の減額基準、公立高校の授業料免除基準、就学援助の給付対象基準、また、自治体によっては国民健康保険料の減免基準など、医療・福祉・教育・税制などの多様な施策の適用基準にも連動してきます。最低賃金も下がり、ワーキングプアがもっと増えることになります。
問題は、生活保護基準の改定は国会の議決事項ではなく、厚生労働大臣の告示で決まってしまいます。市民生活をいっそう苦しくし、貧困を拡大する保護基準切り下げをストップさせるためには、厚生労働大臣や与党に対して切実な声を届け、厚労省官僚の引き下げ方針を受け入れないように求める世論が重要です。
▼貧困の拡大に目を向けろ!
厚生労働省内の有識者会議「生活扶助基準に関する検討会」が、本年11月30日、生活保護基準に関する報告書を提出し、これを受けて舛添要一厚生労働大臣が、来年度からの引き下げを明言したのです。ところが、この検討会の報告書は、生活保護基準を引き下げるとは一言も言っていません。そればかりか、12月11日には、委員全員の連名で「生活扶助基準引き下げには慎重に当たるべきだとの考えが『全員の総意として確認された』」との文書さえ出されています。
参院予算委員会での質疑では、福田首相は「厚労省の所管」と答弁を回避し、舛添厚労相は「来年の予算編成にどう反映していくか、与党のみなさんと具体的に検討していく」と、国民の貧困が広がり、厳しい実態をまったくわかっていない答弁に終始しています。
このような動向の中で、厚労省は一律引き下げを諦め、「格差是正」の名目に都市部の保護基準を引き下げ、地方を引き上げる方針だとも報道されだしています。
▼憲法25条の生存権保障を否定!
生活保護基準は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準であって、国民の生存権保障の水準を決する極めて重要な基準です。11月28日に可決成立したばかりの改正最低賃金法は、「生活保護との整合性に配慮する」ことを明記して最低賃金引き上げに道を開きましたが、生活保護基準が下がれば、最低賃金の引き上げ目標額も下がることとなります。また、生活保護基準の引下げは、現に生活保護を利用している人の生活レベルを低下させるだけでなく、 所得の少ない市民の生活全体にも大きな影響を与えます。
生活保護基準以下の生活を余儀なくされている低所得者が多数存在する現状において、現実の低所得者層の収入や支出を根拠に生活保護基準の引き下げを許せば、生存権保障水準を際限なく引き下げていくことになります。「ワーキングプア」が多数存在する中で、生存権保障水準を切り下げることは、格差と貧困の固定化をより一層強化し、努力しても報われることのない、希望のない社会となります。
▼最後のセーフティネットを破壊するな!
日弁連をはじめ、多くの市民団体・労働団体等が「安易かつ拙速な生活保護基準の引き下げに反対する」声明を出して、抗議しています。政府が進める新自由主義政策によって、日本社会は確実に貧困層が拡大し、最後のセーフティネットとなっている生活保護制度さえも破壊しようとする福田政権は許せません。政府と自民、公明両党に貧困NO! 生存権保障基準を引き下げるな! 生活保護基準の引き下げ案を撤回しろ! との世論を早期に拡大しましょう。
2007.12.16 - 吉野 信次 -
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