憲法違反の多国籍軍参加は撤回しろ!
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小泉政権は、自衛隊のイラク派兵に続いて、多国籍軍参加を決定する暴挙をおこないました。6月18日の閣議で、イラクに駐留する自衛隊が、6月30日に発足するイラク多国籍軍に参加することを決定したのです。この閣議では、イラク特措法施行令に自衛隊駐留継続の根拠となる国連安保理決議1546を加え、関連する基本計画も変更しています。この決定をした閣議了解は「自衛隊は多国籍軍の中で今後とも活動を継続する」と参加を表明し、一方で「多国籍軍の司令部指揮下に入らない」「我が国の指揮に従う」としています。その担保は「米英両政府との了解」を挙げています。さらに「自衛隊が多国籍軍の中で活動を行うことは、従来の政府見解を変えるものではない」と強弁しています。なぜ、そうなるのかの具体的な説明はされていません。
『毎日新聞』が実施した全国世論調査(6/12〜13)では、自衛隊の多国籍軍への参加に「反対」が54%、「賛成」の33%を大きく上回っています。世論は、武力行使を任務に含む多国籍軍への参加で、自衛隊の海外活動がなし崩しに広がることへの不安感があると思います。
この政府決定は、明らかに集団的自衛権行使に通じる危険性が大きく、憲法違反・蹂躙にほかなりません。これまでの政府見解でさえ、国連軍(多国籍軍)の任務・目的が武力行使を伴う場合には、自衛隊の参加は憲法上許されない、と述べてきました。今回決議された安保理決議1546によれば、多国籍軍は「統一された指揮下で」活動することになっており、米国は米軍が指揮権を握ることを繰り返し明言しています。小泉政権が「自衛隊の独自の指揮権は日本にあるから憲法に違反しない」との解釈は、詭弁です。さらに、国の進路を大きく変える決定を、国会の審議もなく、国民への説明もなく決定することは、絶対に許されません。小泉政権は、この決定を撤回し、自衛隊を即時撤退させるべきです。
6月末にイラクへの主権移譲がおこなわれますが、このイラク戦争・占領は何のために引き起こされたのか、あらためて考えて見るときではないかと思います。ブッシュ政権のイラク戦争への『大義』は、フセイン政権が保持するとした「大量破壊兵器」の除去と、アルカイダとの「協力関係」でした。「大量破壊兵器」については、その存在が発見できないばかりか、ウソの情報操作によるものであったことが明らかになっています。さらに、イラクとアルカイダとの協力関係についても、2001年米同時多発テロ事件への米政府の対応を調べてきた独立調査委員会が、6月16日、「アルカイダのテロ攻撃にイラクが関与したことを示す証拠は発見できなかった」とする報告書を公表しています。
この2つの事実解明によって、ブッシュ政権のイラク戦争への『大義』はすべて崩壊したことになります。国際法や国連憲章に違反する先制攻撃論などのブッシュ戦略がいかに愚かで、国際的な世論に逆行している身勝手な世界戦略であるかが明らかになりました。この戦略に追従してきた小泉政権の「日米同盟」路線も大きな見直しを迫られています。それだけに、今夏の参議院選と秋の大統領選挙に注目していきたいと思います。
2004.06.21 - 吉野 信次 -
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