レターポスト

もう20年以上前になりますが、東京都瑞穂町の新青梅街道沿いにある商店の前に丸ポストがありました。おそらく展示品だったのではないかと思います。このポスト、投函口に「POST」ではなく「LETTER」と書かれていました。車で通りすぎた際に2、3回、目にしただけなので見間違いだったかもしれません。(また、随分前のことなので記憶違いの可能性もあるかと…)
ポストのそばへ行き詳細を見てみたいと思っているうちに時間が過ぎ、いつの間にかこのポストは撤去されていました。この「LETTER」と書かれているポストの素性がなかなかわからず、長い間気になっていました。

時は過ぎて…
郵政博物館の刊行物「郵政博物館 研究紀要 第6号」を読んでいたところ、「戦後初の新規格郵便ポスト 「1号丸型」の試作から完成まで ―謎のレターポストの解明―」という記事があり、気になっていた「LETTER」と書かれたポストが紹介されていました。

この記事によると「LETTER」と書かれているポストは、1948年から1949年にかけて、1号丸型を作る前段階に試作されたポストとのこと。 記事の中では「レターポスト」という名称が使用されていました。このページでも「レターポスト」の名称を使用させていただきます。
記事の中には、現存するレターポストの場所も記載されていました。その中の1か所、千葉県白井市にある「白井そろばん博物館」でレターポスト(現役です、投函すると配達してもらえます)を撮影させていただきました。白井そろばん博物館様、ありがとうございました(2018年5月に撮影させていただきました)。


レターポスト
千葉県白井市(2018年5月撮影)

全体的な形は後の1号丸型とよく似ていますが、各所に相違があるようです。また、レターポストでは試作初期段階から投函口と取集口の向きを変えられる構造になっていたようです。向きを変える構造は、試作品の試用で便利であると評価され、1号丸型でも採用されたとのことです。


頭部ですが、丸型庇付ポストや1号丸型にある出っ張りはありません。最終的な仕様では、頭部に広告塔を取り付けるためのネジ穴をあけ、通常はネジでふさいでおくことになったようです。1号丸型の頭部の出っ張りは、穴をふさぐためのネジだったんですね。


投函口周辺ですが、「LETTER」の文字がありその下に「郵〒便」の文字があります。庇には桜と思われる模様がついています。


差入口ですが、下部が緩やかなカーブを描いています。1号丸型では差入口に白いホーロー引滑り板が取り付けられていますが、レターポストにはその板が取り付けられていません。投函のしやすさと汚損を防ぐため、1号丸型ではホーロー引滑り板を取り付けることになったそうです。


側面ですが、取集時刻等を掲示する枠がありません。試作を進める中で、1号丸型には周知事項等を掲示する枠を取り付けることが決まったようです。


収集口ですが、本体と接している上部が緩やかなカーブを描いています。レターポストはこのようなところも1号丸型と異なっているようです。


下部ですが、滑らかに広がる形になっています。1号丸型では複数の輪が重なるような形で広がっています。ここもレターポストから1号丸型になるまでの間に変更されたところなのかと思います。


取集口裏側の下部には制作会社名の刻印がありました。このレターポストには「協和産業株式会社納 名古屋」の刻印がありました。

参照した郵政博物館刊行物の記事には、試作段階でのデザインや機能の変更が記載されていました。レターポストは、試作時にいろいろなバリエーションのものが作成されていたのかもしれません。

白井そろばん博物館のメイン展示のそろばんも、非常に興味深い品々が多数あり、館長様に楽しい話をたくさん聞かせていただきました。メイン展示品ではないレターポストに興味を持ってやってきた珍客に、ポストの撮影を許可してくださった館長様、職員様、本当にありがとうございました。

(2019年9月)


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