ブレイド・オブ・アルカナ シナリヲ
Das Schloß von der Schlechtigkeit
〜悪徳の館〜


○はじめに
 本シナリヲの適正プレイヤー人数は3人である。
 よって、4人以上でプレイしたい場合は殺戮者、敵ゲスト、トループを強化したりといろいろ処理をする必要がある。
 なお、適正人数未満でのプレイは可能であるが、トラップなどを弱体化させる必要がある。
 本シナリヲはダンジョンシナリヲである。
 とはいうものの、往年のRPGのようにトラップを回避しながらダンジョンの奥に眠るお宝を探すシナリヲではない。
 PCの目的は、殺戮者を倒し、ダンジョンから脱出することである。
 また、トラップは必ず発動する。この発動したトラップをPCの能力を駆使しながらうまく切りぬける、そういった主旨のシナリヲである。
 かなりボードゲームに近い。
 本シナリヲは謎解きとか、NPCとの熱い絡みとかそういうのはないので、そういうのがお好みの人はお勧めしない。

○背景
 殺戮者フラウ・ヴォーヌングは《古代儀式》をきわめたオービスである。
 彼女は通常とは異なる空間をつくり、そこに住んでいた。
 彼女は《古代儀式》を使い、聖痕者を館に召喚し、そして聖痕を奪っていた。
 そして、PCらに白羽の矢が立った。





○導入フェイズ全PC共通

 君は目が覚めた。
 ここはどこだ? まず、そう思った。
 たしか、夕べは多少贅沢をしようと思っていつもより高価な旅篭に泊まった。酒もいつもより多めに飲んだが、酔いつぶれるまでは飲まなかった。
 きちんと自分の足で部屋まで行き、ベッドに入って寝たはずだ。
 それは確かだ。
 しかし、どうだ。
 ここはどこだ。
 君はあたりを見まわした。
 薄暗い部屋。
 床はびっしりと石が敷き詰めてある。
 そして、目の前は鉄格子。
 これではまるで、牢屋ではないか。

 牢屋からは〈格闘〉判定に3回成功すれば鉄格子が外れて牢屋の外に出ることができる。失敗しても何もないが、ファンブルすると、HPに1D10の実ダメージを受ける。牢屋から抜けると、扉がある。
 この扉を抜けて先に進めば、展開フェイズである。




○展開フェイズ

 :はじめに、トランプを1組用意する。ひとつのスートを選び出し、以下のように並べる。
10
 並べ終わったら、A以外をすべて裏返す。
 Aは導入フェイズの牢屋を示す。
 これが今回の館のマップであり、トランプ1枚1枚が本シナリヲの1シーンにあたる。
 シーンの舞台は扉と扉の中の空間、つまり、部屋あるいは通路となる。
 扉の外に出れば、それはシーンから退場した事になる。
 移動は表になっているカードかその隣りのカードにしか行けないが、隣同士の部屋、あるいは通路は直接物理的につながっているわけではない。カードとカードの間にはこれといってイベントのない部屋や通路で結ばれているからである。よって、基本的に部屋、あるいは通路の扉は入ってきた扉とそれとは反対側にあるもうひとつの扉の二つしかない。
 以下、便宜上入ってきた扉を入口、もう片方の扉を出口と表記する。
 以下の各パラグラフ冒頭の数字またはアルファベットは上記トランプ数字またはアルファベットを示す。
 部屋、あるいは通路は洋館のイメージで。

2:泉/HP回復
 部屋の中央には円形の囲いがあり、そこから水が涌き出ている。
 囲いの更に中央には碑があり、そこにはこう刻まれている。
「生き延びたければ人間の尊厳を捨てよ」

 この水を飲むとDPを3点減少するが、HPが1D10回復する。ただし、HPの上限を超えては回復しない。
 この行為はシナリヲ中、何度でも行える。
 この部屋に入ったなら2のカードを表にする。

3:トラップ/回廊と弓兵
 その通路はとてつもなく長かった。
 その遥か先には、ロングボウを構えた弓兵の像が(PCと同数)ある。
 彼らのつがえる矢の先端には火がともっている。

 〈知覚〉判定に成功すれば、足元の絨毯に油が染み込んでいるのがわかる。
 館マップとして並べたスートとは別のスートのカードA〜7を用意し、それを右からAから順に並べる。  これはこのシーンにおける通路を表す。  初期位置は、7にPC、2にはPCと同数の弓兵の像(イグニストループ10人相当)、Aに扉がある。
 ここからは戦闘ラウンドと同様に扱うが、通常のように1ラウンド毎にシーンは変えないこと。
 1ラウンド目に弓兵は火矢を7のカードの絨毯に放つ。
 以降、絨毯に火が燃え移ったとして、1ラウンドにつきカード1枚づつ絨毯に火が燃え広がる(カードを1枚づつ裏返していくといいかもしれない)。これはクリンナップフェイズに行う。
 絨毯が燃えているカードにいる限り、クリンナップフェイズに1D10の実ダメージを受ける。
 弓兵は2ラウンド目以降は火矢ではなく、通常の矢で〈射撃〉による攻撃を行うが、それぞれ一人のPCしか狙わない。
 また、炎に巻き込まれたPCも狙わない。
 絨毯を∵爆破∵で破壊することも可。破壊すれば火は消える。
 弓兵の像を∵爆破∵で破壊することは不可能とする。ルール的には器物ではなく、トループ(キャラクター)だからだ。

4:「束縛の美女」
 部屋の壁に1枚の肖像画がかかっている。
 たいへん美しい女性の絵だ。額を見るに、その絵のタイトルらしき言葉が見つかる。
 「束縛の美女」
 その絵をじっくり見ていると、ふと、絵の中の美女が微笑んだような気がした。
 すると、絵ががらりと変わり、ひとつの映像が流れる。

 そこは謁見の間。
 ただし、その中にいるのは物言わぬ人形たち。
 王も大臣も将軍も衛兵も、皆、一言も言葉を発せず、また、微動だにしない。
 いや、よく見ると、彼らたまにまばたきをしているのがわかる。
 人形なのに?
 さらにじっと観察しているとかすかに胸が上下している。また、汗のようなものが彼らの額を伝わる。
 そう、彼らは人形ではない。
 何らかの力によって人形のようにされた人間たちなのである。
 そして、謁見の間に入ってくるものが一人。
 生き生きとした表情を浮かべ、弾むように歩み寄る美女。
 先ほどの絵の美女だ。
 しかし、彼女はよく見ると、人間ではなく、人形である。
 その人形が動かない、いや、動けない人間たちを楽しそうに小突いては彼らを倒していく。
 最後に王をその玉座から落としたところで、ふと、彼女はカメラ目線でこちらを向いた。
 そこには、極上の笑みを浮かべた人形がいた。

 気づくと絵は元に戻っていた。

 悪徳の発露。そのシーンに登場しているPCに鎖を1枚づつ配る。
 この肖像画は「自由の槌」でないと破壊できない。
 肖像画を破壊すれば、その場にいるPCのDPが1D10回復する。
 肖像画を破壊したなら、4のカードを表にする。

5:「無知の美女」のボス/背面の激流、前面のアダマストループ
 その通路はとてつもなく長かった。
 だが、その遥か先には一本の槍が飾られていた。
 通路の両側にはフルプレートの置物がぎっしりと通路を守るように並んでいる。
 前に進みだしてしばらくすると、轟音が聞こえる。
 振り向くと、激流が迫ってくる。早く逃げなければ、激流に飲み込まれる。
 しかし、それを阻むようにフルプレートがぎしぎしと気味の悪い音をたてながら動き出した。

 ここからは戦闘ラウンドと同様に扱うが、通常のように1ラウンド毎にシーンは変えないこと。
 館マップとして並べたスートとは別のスートのカードA〜7を用意し、それを右からAから順に並べる。
 これはこのシーンにおける通路を表す。
 初期位置は、7に激流、4にPC、3と2にはそれぞれフルプレート(アダマストループ)×10、Aに槍と扉がある。
 激流は1ラウンドにき1枚進む(カードを1枚づつ裏返していくといいかもしれない)。これはクリンナップフェイズに行う。
 PCのいる位置に激流が来たら激流に飲まれたとして、奇跡以外のいかなる行動も出来ない。激流がAに到達した時点で激流に飲まれたPCは(カードの数字)D10の実ダメージをHPに受ける。
 フルプレート(アダマストループ)は攻撃はしないが、PCの行く手は阻む。
 フルプレートが同一のカードにいる場合、PCは〈運動〉でフルプレートとの《封鎖》による対決に勝たなければ次のカードには進めない。
 なお、実力でフルプレートを排除ことも可能。
 激流が来るまでに7のカードまでたどりつけば、槍をとり扉を開けて中に入ることができる。これに判定はいらないが1行動消費すること。
 槍の柄には「無垢」と刻まれている。
 ∵神移∵で一気にAまでくることも可。
 激流がAまで来れば、しばらくすると、水が排出される音がする。
 フルプレートは、残りのHPの値に関わらず、もう動かない。
 傷ついたPCらの目の前にあるのは、無垢の槍と扉だ。
 無垢の槍を取ったなら、5のカードを表にする。
 フルプレートを∵爆破∵することは可能だが、ルール的にはトループの装備しているフルプレートを破壊するだけであり、鎧の"中身"は引き続きPCらの行く手を阻む。

6:「無知の美女」
 部屋の壁に1枚の肖像画がかかっている。
 たいへん美しい女性の絵だ。額を見るに、その絵のタイトルらしき言葉が見つかる。
 「無知の美女」
 美女、というよりは美少女と称した方がよい年齢ではあるが。
 その絵をじっくり見ていると、ふと、絵の中の美女が微笑んだような気がした。
 すると、絵ががらりと変わり、ひとつの映像が流れる。

 そこは暖炉のある洋館風の一室。
 室内には無邪気に笑う先ほどの絵の少女がいる。
 彼女は、既に飽きたのか、人形をばらしてはそれらを暖炉にくべる。
 まずは手のひらサイズの人形。
 暖炉にくべる人形のサイズはだんだんと大きくなっていく。
 そして、人間大のサイズになったとき、君は気づいた。
 それは、人形ではなく、本物の人間の四肢だということに。
 それでも少女は無邪気に笑っている。
 それが人間だと気づいているのか、いないのか。
 ばらばらにされたその頭は彼女に恨みがましい目を向けている。
 そんな頭を彼女は楽しげに暖炉にくべた。
 ふと、彼女はカメラ目線でこちらを向いた。
 そこには、極上の笑みを浮かべた少女がいた。

 気づくと絵は元に戻っていた。

 悪徳の発露。そのシーンに登場しているPCに鎖を1枚づつ配る。
 この肖像画は「無垢の槍」でないと破壊できない。
 肖像画を破壊すれば、その場にいるPCのDPが1D10回復する。
 肖像画を破壊したなら、6のカードを表にする。

7:美女の像1/イベント
 その部屋の中央には美しい女性の像がある。
 像に近づくと、どこからともなく声が聞こえてくる。
 いや、声ではない。頭に直接響く、思念のようなものだ。
 「闇を求めよ、力を求めよ」
 「闇に身をゆだねよ、力に身をゆだねよ」(以上エンドレスで)

 誘惑の言葉が鎖となってPCを襲う。
 悪徳の発露。シーンに登場しているPCに鎖を配布する。
 鎖を配布したら、7のカードを表にする。
 悪徳の発露は、PCのだれかが初めてこの部屋を訪れた時だけである。
 ∵爆破∵で像を破壊すれば、上記の言葉は聞こえなくなるが、それでも悪徳は悪徳。
 鎖を配布すること。

8:聖痕者の亡霊/殺戮者への道筋
 その部屋に亡霊が現れる。
 曰く、私は聖痕者だったものだ。この館は殺戮者フラウ・ヴォーヌングが我々聖痕者の聖痕を集めるためのものだ。奴は聖痕者を館に召喚しては殺して聖痕を奪う。私も奴に聖痕と命を奪われたものだ。
 私の声が聞こえるならば、頼む、ヴォーヌングを倒してくれ。このままでは私は転生できぬ。
 ただし、奴に会うためには館のどこかにある3枚の肖像画を破壊しなければならない。
 「無知の美女」には「無垢の槍」をもちいよ。
 「汚染の美女」には「清浄の剣」をもちいよ。
 「束縛の美女」には「自由の槌」をもちいよ。
 そこまでいうと、亡霊は力尽きたように薄れていき、じきに完全に消える。

 亡霊が消えれば、8のカードを表にする。

9:美女の像2/イベント
 その部屋の中央には美しい女性の像がある。
 像に近づくと、どこからともなく声が聞こえてくる。
 いや、声ではない。頭に直接響く、思念のようなものだ。
 「襲え、おそえ、ヲソエ……」(以上エンドレスで)

 誘惑の言葉が鎖となってPCを襲う(悪徳の発露)。
 シーンに登場しているPCは〈自我〉判定を行うこと。
 これに失敗した場合は正気を失い、別のPCに攻撃をしてしまう。
 攻撃対象は、プレイヤーの右隣のPCに対して行うこと(もちろん、シーンに登場していないPCは除外する)。
 ただし、シーンプレイヤーしか登場していなければ、自分に攻撃をすること。
 この攻撃は、最大ダメージを叩き出せる可能性のある攻撃を行うこと(ただし、奇跡は使用しない)。
 ここからは戦闘ラウンドと同様に扱うが、通常のように1ラウンド毎にシーンは変えないこと。
 1点でも実ダメージを与えるか、クリンナップフェイズで再び〈自我〉判定に成功すれば、PCは正気に戻る。
 〈自我〉判定で正気を保つ、あるいは正気を取り戻したPCには正位置の鎖を、ダメージを与えて正気を取り戻したPCには逆位置の鎖を配布すること。
 なお、途中で退場したPCには鎖は配布しない。
 鎖を配布し終えたならば、9のカードを表にする。
 悪徳の発露は、PCのだれかが初めてこの部屋を訪れた時だけである。
 ∵爆破∵で像を破壊すれば、上記の声は聞こえなくなり、PCも正気に戻る。
 像の破壊によって正気に戻ったPCには鎖を配布しない(この場合も9のカードを表にすること)。
 
10:「汚染の美女」のボス/戦闘
 部屋に入ると、一人のメイドと甲冑の置物が2揃ある。
 メイド曰く、お館さまの命により、その聖痕、ちょうだいいたします。

 戦闘。
 すべてのキャラクターは同一のエンゲージにいる。
 メイド:クレアータ・レクタ
 甲冑:アダマストループ10人相当*2
 メイドは最初のターンで《攻性化》。その姿は、3つの頭をもつ黄金の竜。
 甲冑の方は、始終、でメイドを守るように戦う。
 メイドを倒せば、その体の中から一振りの剣が出現する。
 刀身には「清浄」との銘がある。
 メイドを倒し、清浄の剣を取ったならば、10のカードを表にする。

J:トラップ/釣り天井
 その部屋に入ると、天井が降りてくる。釣り天井である。
 天井が床に接するまで6ラウンド(註1)かかる。
 天井はクリンナップフェイズに1段階降下する。
 4ラウンドで普通の人間の頭に届く(これを第4段階という)。
 天井が床に接する1段階前の状態(第5段階)になったら、室内にいるPCはすべての判定にダイス−1の。ペナルティを受ける。
 天井をささえることはそれを宣言するだけで可能だが、1ラウンドごとに体格チェックに成功しなければ1D10の実ダメージをHPに受ける。支えている限り、天井はそれ以上下がらない。
 天井が床に接したら、部屋の中にいるPCは死亡する。これはアウトオブルールであり、通常のルールは適応しないが、∵不死∵では復活するものとする。ただし、∵再生∵では復活しても肉体はプレスされたままなので、すぐに死亡する。
 部屋から脱出する方法は2つある。
 ひとつは入口から部屋を出ること。
 ふたつめは出口から部屋を出ること。
 扉には二つの鍵がかかっている。これを開けるには〈隠密〉に2回成功しなければならない。シニストラルツール(註2)などを持っていなければ、判定に用いるダイスを−1する事。
 鍵を開けるのではなく、扉そのものを破壊するという手段も可能。
 扉のHPは20とする。
 回避はしない。装甲値はなしだが、Cタイプ以外の武器ではダメージを与えられないものとする。
 天井を支えているPCが移動したい場合は〈運動〉に成功する必要がある。1回でも成功すれば室内のどこにもいけることとする。
 室内の移動は部屋のどこへ行くのにも1ラウンドかかるものとし、また、扉から出る、という行為にも1ラウンドかかるものとする。
 ∵爆破∵で天井または扉を破壊することも可。
 出口から部屋を出たならばJのカードを表にする。
 以降、何度この部屋に入っても天井は降りてこない。
 逆に、入り口から出たならば、カードは裏返しのままにする。
 再びこの部屋に入ったときは、初期状態から天井が降下してくる。

 註1:ここでいうラウンドは、戦闘におけるラウンドにほぼ等しいが、ここではシーンは変えないこと。
 註2:BoA2ndの場合、メイクアップでのキャラクターではシニストラルツールを所持していないので、このペナルティはなくしたほうがいいかも。

Q:「汚染の美女」
 部屋の壁に1枚の肖像画がかかっている。
 たいへん美しい女性の絵だ。額を見るに、その絵のタイトルらしき言葉が見つかる。
 「汚染の美女」
 その絵をじっくり見ていると、ふと、絵の中の美女が微笑んだような気がした。
 すると、絵ががらりと変わり、ひとつの映像が流れる。

 そこはさびれたある農村の風景。
 空はどんよりと暗雲がたちこめている。
 人が倒れている。
 いや、人ではない。既に死んでいる。
 その身体には黒い斑点が幾多もあり、また、ウジがわいている。
 見ると、死体はそれだけではない。
 なんと、村全体、あちらこちらに見える。
 どうやら、老若男女、すべてがこのように物言わぬ身体になっている。
 疫病だろうか。
 しかし、昼時であったのであろうか、食卓にはまだ温かいままのスープやミルクが並べられている。それも、どの家庭でもだ。
 まさに、一瞬のうちのこの疫病が広まったとしか思えない。
 ふと、村の中央の広場に目をやると、一人の美女が立っている。
 先ほどの絵の美女だ。
 この状況の中で、何が楽しいのか、けらけらと笑っている。
 ふと、彼女はカメラ目線でこちらを向いた。
 そこには、極上の笑みを浮かべた美女がいた。

 気づくと絵は元に戻っていた。

 悪徳の発露。そのシーンに登場しているPCに鎖を1枚づつ配る。
 この肖像画は「清浄の剣」でないと破壊できない。
 肖像画を破壊すれば、その場にいるPCのDPが1D10回復する。
 肖像画を破壊したなら、Qのカードを表にする。

K:「束縛の美女」のボス/水晶球
 部屋の中央に一本のメイスが安置されている。
 そのメイスと一緒にひとつの水晶球もある。

 メイスまでたどりつくには2回分の移動が必要。判定は不要だが、1回の移動に付き〈隠密〉判定をすること。〈隠密〉に失敗すると水晶球から幾筋かの光条が発せられ、それが室内にいるすべてのPCを襲う。HPに1D10の実ダメージを受ける。
 なお、メイスのあった位置から部屋をでるにも〈隠密〉判定に成功しないとダメージを受ける。
 メイスの安置されている台には自由とかかれている。
 メイスを取ったなら、Kのカードを表にする。
 ∵爆破∵で水晶球を破壊すれば、〈隠密〉判定の必要はない。


 注意0
 7の美女の像と、3枚の肖像画はそれぞれこの館の主である殺戮者フラウ・ヴォーヌングがモデルである。
 ただし、「無知の美女」はヴォーヌングの少女時代の肖像画であるし、「束縛の美女」はヴォーヌングをモデルとした人形である。
 ヴォーヌングの描写説明はここではしないが、各ゲームマスター自身が、美女、と思える描写をすること。
 むろん、とても美しい女性だ、でも構わない。

 注意1
 肖像画を破壊するための3つの武器は、シナリヲアイテムである。
 よって、データはなく、これを通常の武器のように使用することは不可能とする。
 また、肖像画を∵爆破∵で破壊しようとするプレイヤーがいた場合は、遠慮なく∵爆破∵を使わせること。
 ただし、対策として殺戮者フラウ・ヴォーヌングに∵天真∵を三つ用意した。まさか、四つも∵爆破∵を持っているとも思わないが、四回目の∵爆破∵をしてきたら潔く肖像画は破壊させよう。ただし、その場合はDPは回復しない。
 なお、本シナリヲでは肖像画を∵爆破∵で破壊する行動を推奨しない。プレイヤーには素直にこれをいったほうがいいだろう。

 注意2
 無駄にシーンを過ごしながら物忌み(+代償Rの特技)を繰り返したりするプレイヤーがいたら、ゲームマスターはその権限を持って、「頼むからその行動はやめてくれ」といってやろう。
 その行動ができるのは、本シナリヲの欠点であるが、本シナリヲはそれを推奨するものではない。




○対決フェイズ

 3枚目の肖像画を破壊すると、場が陽炎のように揺らぐ。
 そして、気づくとそこは館のロビーのような場所。
 壁にはそれまでに見てきたような美女の肖像画がある。
 それもこれまでよりも数段に大きなサイズの。
 目の前には出口であろう思われる扉がある。
 しかし、それを阻むように一人の美女、フラウ・ヴォーヌングが立ちはだかる。
 曰く、ここまで来る聖痕者がいるとは驚きですわ。まぁ、いいでしょう。わらわが直接その聖痕、奪ってさしあげますわ。捧げなさい、その聖痕。今宵は殺戮の宴なり。
 そう言うと彼女の体から闇のオーラが発せられる。それがヴォーヌングと重なる。ヴォーヌングは無貌の美女となる(異形)。

 ヴォーヌングとの戦闘。
 PCたちは同一のエンゲージに、ヴォーヌングのいるエンゲージは彼女一人だけ存在する。
 戦闘が始まった直後に、∵大破壊∵を使用。
 それ以後はHPが0以下になるまで奇跡は使用せず、《火炎》で攻撃を行う。
 HPが0になったら、∵不死∵を使用。
 そのまま、∵戦鬼∵を使用し、最初の行動で《攻性化》(マイナーアクション)、〈格闘〉+《触角》(メジャーアクション)で攻撃。
 以下、HPが0以下になるか、PCのだれかのHPが0以下になるまで〈格闘〉+《触角》を使用。
 《攻性化》状態でHPが0になったら、再び∵不死∵を使用。
 ただし、この∵不死∵には以下の演出を挿入する。

 極限の加速状態に彼女の身体は耐え切れなかったのか、その身体が崩れ落ちる。
 いくつかの輝きが彼女の身体からあらわれる。
 聖痕の解放?
 いや、違う。
 その輝きは、微笑を浮かべるフラウ・ヴォーヌングの巨大な肖像画へと次々に吸い込まれる。
 そして、"彼女"が語りだす。
 「どうやら、その人形ももう捨て時のようね。なかなか気に入っていたのだけど、残念だわ。今度はもっと丈夫なのをつくろうかしら。でもそのためにはあなた方からその聖痕を奪わなければね」
 絵の中の彼女が指をぱちんと鳴らすと、それまでヴォーヌングだと思っていたものは一瞬のうちに炎を上げて燃え尽き、跡形もなく消滅する。
 そして、館全体から闇のオーラが発せられる。
 その闇のオーラはやはり無貌の美女をかたどり(異形)、刻まれし者の聖痕を奪おうと襲いかかってきた。
 なんと、殺戮者は、この館そのものだったのである。

 以上は演出である。
 ルール的な状況は、ただ単に∵不死∵を使用しただけである。
 よって、直前までのヴォーヌングとの距離などは変わらない。
 ヴォーヌングに攻撃する、といえば、攻撃できる。
 演出的には、受肉した異形を攻撃しているとみなせばいいだろう。

 館が殺戮者ならば、∵爆破∵で館そものもを破壊する、とプレイヤーが主張した場合、遠慮なく∵爆破∵を使わせること。
 ただし、対策として殺戮者フラウ・ヴォーヌングに∵不死∵をひとつ用意した。
 また、2回目の∵爆破∵ならば、素直に破壊されてあげよう。




○終結フェイズ
 ヴォーヌングを倒すと、ぶるん、と館が一度大きく震えると、一瞬の沈黙の後、再び振動が館を襲う。はじめは弱く、しかし、徐々にその振動は大きくなる。振動が大きくなるに連れて、ぼっ、ぼっとあたりに炎が現れては燃え広がる。はやく館から出なければ館と一緒に焼け死んでしまう。
 館から出ると、そこは見知らぬ荒野。
 振り向くと、炎を燃え上がらせながら徐々にその姿が薄らいでいく館がある。
 館からはいくつもの輝きが天に昇っていく。
 聖痕の解放。
 そして最後の聖痕が天に消えると、ついに館は痕跡すら残してその姿を消す。
 空は闇だが、しかし、一方がだんだんと白んでくる。
 夜明けだ。
 ここはどこだかはわからない。しかし、どんな夜にも必ず夜明けは来る。
 刻まれし者たちは新たな一歩を踏み出した。






○キャラクターデータ
・殺戮者:フラウ・ヴォーヌング
 アングルス=オービス=クレアータ
 能力値
  体格:15 反射:12 共感:15 知性:20 希望:15
 技能
  <自我>●●● <格闘>●●● 〈秘儀魔法〉●●●
 特技
  《加護》《魔力霧散》《火炎》《古代儀式》《攻性化》《触角》
 装備
  武器:なし
  防具:ローブ
 奇跡
  ∵天真∵ ∵封印∵ ∵戦鬼∵ 
  ∵大破壊∵ ∵拡大∵ ∵不死∵ ∵不死∵
  ∵天真∵ ∵天真∵ ∵天真∵ ∵不死∵

   三段目の四つの奇跡は、前述したように、すべて∵爆破∵対策である。
 よって、それ以外の用法では使用しないこと。

・NPC:10のメイド
 クレアータ・レクタ
 能力値
  体格:13 反射:12 共感:6 知性:15 希望:12
 技能
  <自我>●●● <格闘>●●● 〈回避〉●●
 特技
  《攻性化》《装甲外皮》《牙突針》《増腕》
 装備
  武器:なし
  防具:ローブ

・トループ:10の甲冑
 アダマス
 能力値
  能力値:5+人数 反射:4+人数 共感:3+人数 知性:3+人数 希望:4+人数
 技能
  〈重武器〉●●●
 特技
  《防護》
 装備
  武器:バスタードソード
  防具:フルプレート 

・トループ:5のフルプレート
 アダマス
 能力値
  能力値:5+人数 反射:4+人数 共感:3+人数 知性:3+人数 希望:4+人数
 技能
  〈重武器〉●●●
 特技
  《封鎖》
 装備
  武器:バスタードソード
  防具:フルプレート 

・トループ:3の弓兵
 イグニス
 能力値
  能力値:4+人数 反射:5+人数 共感:3+人数 知性:3+人数 希望:4+人数
 技能
  〈射撃〉●●●
 特技
  《動視》《暗射》
 装備
  武器:ロングボウ
  防具:なし