銭 湯 解 析

大 黒 湯  (調査:H11.08.13)






 
 大黒湯正面

玄関先で主人がのんびりと涼んでいる姿をまだ見れるのだろうか。。。


足:洲本港もしくは土生港から沼島汽船にのり船着き場到着、郵便局裏の路地を歩くとあり。


この船が洲本・土生〜沼島を結ぶ沼島汽船の「しまちどり号」。洲本便は1日1便しかなく不便、土生便は約1時間に1便と便数が多いものの、土生汽船場前から洲本や福良方面に向かう(その逆も)淡路交通バスの本数がかなり少ないので注意。
車の場合は土生港に駐車場がある。

平成15年7月、沼島に新しいフェリー港か完成したようだ。

沼島汽船:0799−57−0008
最新の船の時刻表はこちら
バスについては淡路交通HPで確認を。



ちょっと前まで沼島汽船の洲本発の便に合わせて大阪・深日港からも洲本へ船が出ていたが、現在は廃止されている。これがその南海淡路ラインの「とらいでんと号」で、何かの賞を受賞した名船であったが航路廃止後の消息は不明。
大阪から沼島へはこの船を使うと便利だっただけに残念である。
営業時間:15時〜21時ごろ
 不定期営業(帰省の多いGWと盆休みの営業)
入場料:大人300円、中人120円、小人60円
 洗髪料30円
住所:兵庫県三原郡南淡町沼島(中区)2494
電話:0799−57−0253
(現在、電話が繋がるかどうかは不明)


偶然にも沼島を訪れたときに発見した銭湯。

沼島は淡路島の南沖合に浮かぶ小島で、国生み神話で一番最初に生まれた島、そしてハモの漁場としても名高い。最近では10年ほど前にTBS系列で放送された『沼島の春・お見合い大作戦』で一躍有名になった島でもある。今でもその時に生まれたカップルが結婚されて幸せに暮らしているという。
ちょうど深日港と洲本港を結ぶ南海淡路ラインが廃止の方向へという記事を知り、なにかいい旅程組めないかなと沼島航路があるのを見つけて友人たちと一緒に沼島へ向かった。

朝9時半に大阪・南海難波駅から深日港、洲本港と乗りついで沼島に着いたのは13時半。片道4000円近くもかかってやっと到着とは大阪湾の対面に位置するのに下手すりゃ名古屋や岡山へ行くよりも時間と金がかかっているぞ。(焦)

やっとのこさ沼島の港について船を下りると、

 

『ようこそ沼島へ』の看板が出迎えてくれる。
この看板、昔に見た「沼島の春」という番組にも登場していたので私はちょっぴり嬉しい。
島は港の周りに集落があるのみで奥に学校と神社と灯台以外は山と松林のみという典型的なのんびりとした島である。さすがお盆の時期なのでかなり日差しはキツく、島の中は何処も海風が吹いて気持ちいいが汗が噴き出してたまらない。2時間ほど歩いて集落に戻り、そろそろ船に乗って帰ろうか、とふと「ゆ」の暖簾がゆらゆらしているのを見つけたのだ。
まさか、島の中に銭湯があるなんて思ってもいなかったのでびっくりした以上に嬉しくて、友人も快く「次の船にして風呂入ろうか」と言ってくれ、喜んで入ろうとすると玄関先で涼んでいるオヤジに「300円」といきなり言われる。
どうもこのオヤジ、ここの主人のようだ。失礼してすんません、とお金を払って入る。

脱衣場はロッカーは旧い木のロッカーで男湯は「いろは…」女湯は「壱弐参…」と筆書きされている。

 
 
(これは女湯脱衣場ロッカー)

これはなんともレトロな!と友人はつぶやいている。
そしてふと玄関の方を振り向けば、なんと外の路地から中が丸見え状態じゃないか!ブロック塀は一応してはいるのだがなにぶん高さが足りないのでなんの役にも立たない。外から脱衣場が丸見えなんて恥ずかしいが、オープンな島の雰囲気を感じることが出来、怒るどころか感心した。
体重計はヤマト製、これもまた懐かしい感じ。

浴室内は、白タイルで造られた浴槽が真ん中に置かれており、深・浅の2種類がある。浅い方は幅が狭く一人が寝そべってしまうといっぱいになってしまうが、これは湯はち(桶の湯を汲むところ)の一種で寝風呂ではないので注意。湯温はちょうどいい。
カランは蛇口のみ。男湯の2つだけシャワーが付いていたが壊れていた。

 

 
 
(上2枚とも女湯浴室)

しばらく風呂を愉しんだ後、脱衣場に戻ると、10人ほどの子供達がバタバタ〜ッと入ってきた。みんな浮き輪やら水中メガネを持っている。あっという間に浴室はすんごく騒々しくなるも、なんだかとっても懐かしくもあり微笑ましい光景だ。自分も昔はこんなんだったのに、こうも……(以下略

サッパリして出ると、主人が同じように玄関先で涼んでいる。あまりにも気持ちよさそうなので向いの雑貨屋でジュースを買って飲み、こちらも涼むことにする。(内にはドリンクの販売はないが、向いに雑貨屋(兼駄菓子屋)があるので問題ない)
雑貨屋と大黒湯の間にはアーケード状に屋根が張られていて日差しを遮り、港から流れてくる風がとっても清々しく、このまま何時間でもおれるくらい気持ちよさ満開である。

しばらくして日もだいぶと傾きだし、大人達もちらほら暖簾をくぐるようになりとっても賑やかになってきた。
そこでやっと目を覚ました主人に話を聞くと、
「もう営業はやめているんだけどね、5月の連休や盆休みはこう地方に出た人達もぎょうさん帰ってくるので開けているんだ。昔はここを含めて3軒もあって人も多かったんだけどね。。。」
そうとは気づかなかった。
この光景を見るに、今も元気に営業されているのかと思ったが、帰って調べてみると確かに廃業して現在は営業していなかった。そうは感じさせないくらいに日常の姿として溶け込んでいたのには驚くばかりである。
これも盆休みで多くの人が帰省しているからそうなのか?普段は本当に寂れてしまっているのか?ここにも日本の病める現状を垣間見たような気がしてならない。

最近、偶然にも本屋で手に取った「シアワセの銭湯旅(図師真吾著・けやき出版)」という本に『秘密の島の秘密のお風呂』という題で、やはり主人はずっと入口の前で夕涼みをしていた、という記述があり、ふと今でも主人は玄関先で涼んでいるのだろうか?今度行くときは主人の話をゆっくりと聞きたいものである。
評価:★★★★★
コメント:雰囲気も立地も最高の条件である。
     まさしく『幻の湯』と呼ぶにふさわしい銭湯である。
     みなさんも機会があれば是非。
     (ただし、現在も営業されているかは不明)


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