今年の支部集会は、佐賀市西与賀コミュニティ・センター(ふれあいスペースセ
ンター)で行われた。このセンターは、公民館のような施設だが高橋の20cm屈折を
もつ天文台が屋上にあり毎週金曜日佐賀天文協会の協力で天体観望会が開かれてい
るという天文拠点でもある。
この研究会についてほとんど知らない人もいると思うので簡単に紹介すると、天
文教育の振興及び天文普及活動の推進を目的とする全国規模の研究会で会員数580
名、九州支部は現在32名。支部活動は毎年11月頃の支部集会のみだが、参加を多く
し活発な会にすることを目的にここ数年非会員の参加も歓迎しており、過去2回は
活気があるフランクな支部会となった。
今回の発表は昨年を上回る8題、参加者は36名と狭い学習室いっぱいとなった。
ただ天文教育普及研究会会員はそのうちの6,7名ほど、後は非会員で大分天文協会
などは7名の大所帯であった。
集会は13時より行われ1演題当たり約20分という予定で始まった。発表演題は以
下のとおり(会員の発表は2、7、8の3題、後は非会員による)。
(1)日時計としての方格規矩鏡(ほうかくきくきょう)の特性 波田野 珠美(
福岡教育大・学生)
(2)総合学習と天文教育 柏木 周二(大分市立判田中)
(3)コンピューターと展示 大道 綾(福岡教育大・学生)
(4)観測結果で天文普及を行う試み〜ヒトに電波の目を持たせる情報機器の開発
松本 欣也(九州東海大)
(5)小望遠鏡の故障について 芹川 治邦(中津商業高校)
(6)「実験でわかる?彗星の謎」講演会の報告
「インターネット・ライブ」で天体観測を生放送 艶島 敬昭(熊本県民天
文台)
(7)1999年の2回の日食観測 松本直弥(長崎県天文協会)
(8)しし座流星群オリエンテーションを行って 木佐貫 篤(宮崎県天文協会
)
演題1は、佐賀の遺跡から発掘された方格規矩鏡に描かれている図柄が実は日時
計なのであるという内容であり、なかなか興味深いものであった。この鏡は実用で
はなくむしろ知識の伝播のために作られたのであろうと考えられるらしい。
演題2は、2002年からの新学習指導要領の天文地学で指導される内容がさらに減
る、天文は生徒に関心ある領域だがうまく教えることができない、そこで新たに作
られる総合学習(今までの科目を横断的に学んでいく)という科目を天文にいかせ
ないかといった内容であった。具体的な例は提示されなかったが、木佐貫が質問と
して「夜間学習の機会を設けられないか」「星座観察・神話からギリシャ神話など
の歴史的背景を学ぶ」など提案した。それに対して芹川氏より「生徒の管理上夜天
体観察することは不可能である」という発言があるなど議論が盛り上がった。柏木
氏からは生徒の選択肢をたくさん用意しその中から選択できるようにしたいとの意
見があった。
演題3は博物館展示はヒトの五感で感じられるものが望ましくコンピューターは
その可能性を開くといった内容だったが、理念的で具体的な例などの提示が無く準
備不足が明らかであった。
演題4が今回一番おもしろいかったもので、電波天文学の観測結果を実際の夜空
にリアルタイムで合成して重ねそれを目で見えるようにしよう、というものだった
。そのために透過型HMD(ソニー製:サングラスの内側にテレビ画面も映って見え
るようなもの)を用意して、HMDのスクリーン上には電波強度をプロットして映し
て実際の星空とあわせて見ようという構想である。まだ現時点では開発途上なのだ
が、この装置に対しては出席者の大きな関心が集まり「これをStella Navigatorを
組み合わせると星座ガイドができて面白い」といった実用的な意見など多数の質問
があった。今後の新たな展開が期待される。
演題5で、多数の望遠鏡を修理した経験から、望遠鏡の故障の原因は架台が弱く
不安定で倒れることがほとんどであると述べられた。そのために架台をターンバッ
クルとひもで地面にしっかりと固定することが肝心とのことであった。
演題6では、熊本県民天文台の今年度の活動からふたつ紹介された。最初は菅原
賢氏(厚木市こども科学館)の指導によるもので、泥水にドライアイスの塊を入れ
て彗星のモデルを作り、それに水をかけるなどして彗星のモデルを作成するという
講演会の紹介であった。参加者もいきいきとして実験に取り組んでいる姿が紹介さ
れるなど興味湧くものであった。後半では、昨年の天王星食での取り組みが紹介さ
れたが、実測でインターネットで2分程の遅れが生じていたというのが意外な印象
であった。
演題7では、ニュージーランド金環食、トルコ皆既日食の報告がなされた。いつ
ものように松本氏の美しい写真が紹介されたが、トルコ皆既日食の臨場感あふれる
ビデオの上映が一番おもしろかった。
木佐貫の発表では、過去3年間に行われたしし群オリエンテーションの紹介を行
った。その後で松本氏からもしし群における普及活動の報告もあったが、パンフレ
ットの配布状況などから昨年が一番大衆の関心があり今年は昨年ほどはなかった印
象であった。松本氏からはアッシャーの予測では2001、2002年にもかなりの出現が
見込めることから、今後のしし群を通じて天文普及に努めていきたいとの発言があ
った。
今回の集会でも昨年同様、九州各地で活動している天文関係者と交流することが
出来とても有意義だったと思う。研究発表の中で一番印象に残った言葉は、松本欣
也氏の理科離れが叫ばれている現在、私たちは子ども達に「夢を語ろう」と述べた
ことであった。これからも天文活動を通じて多くの人に夢を届けられたら、と強く
感じた。
学会としては会員が例会に集まってこない、逆に非会員の参加で盛り上がってい
るというジレンマはあるが、九州での数少ない天文関係者の集まりなので今後も継
続して盛り上がってほしいと思う。来年の開催地は未定だが、未開催地(鹿児島)
もしくはみんなの集まりやすい所(熊本、福岡)といった場所になる予定。
学会終了後、参加者の一部(大分天文協会7人、木佐貫、佐賀天文協会2人、長崎
の松本さん)で車で約90分の佐賀天文協会太良観測所(太良町)へ移動して、大バ
ーベキュー大会(有明海の焼き牡蠣、生牡蠣も、最高級の佐賀牛、佐賀地ビール)
を行い、いろいろな話で夜更け午前3時まで盛り上がった。
天文普及教育研究会のHPが下記にあるので、興味のある方御覧になって下さい。
入会も募集中です。
http://www.obs.misato.wakayama.jp/tenkyo/index-j.html