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評価 ★★★★

ラビッド
RABID

カナダ 1977年 91分
製作 ジョン・ダニング
監督 デヴィッド・クローネンバーグ
脚本 デヴィッド・クローネンバーグ
出演 マリリン・チェンバース
   フランク・ムーア
   ジョー・シルヴァー


 洋ピン専門のジョイパックが配給、主演が『グリーンドア』の本番女優、マリリン・チェンバースだから「ポルノまがいのC級ホラー」かと思っていたら、意外に面白いとの評判で、二番館に降りてきた時に観て、その面白さとデタラメさの双方に驚いた作品。数年後にこの監督が『スキャナーズ』を発表し、「ああ、やっぱり才人だったんだ」と納得した。
 本作は『シーバース』に続くデヴィッド・クローネンバーグの第2作である。

 バイク事故で負傷したヒロインが救急病院に運ばれて人工皮膚の移植を受ける。ところが、この人工皮膚がクセモノで、彼女の腋にヴァギナ状の亀裂が生じ、そこからペニス状の突起物(先端に針付き)が飛び出して、人間の血を吸うのである。
 更に始末の悪いことに、これに血を吸われた人々はなんかの菌に感染し、ゾンビ状態となって人間に噛みつく。かくしてモントリオール市街はたった一人の女のためにゾンビ天国と化すのであった。

 まったくもってデタラメな話である。前作もデタラメだったが、それを上回るデタラメぶりだ。
 しかし、この監督の凄いところは、そのデタラメぶりにこそある。「腋からペニスが出て生き血を吸う」というデタラメな設定に観客が馴染まないうちに、グイグイと強引に引きずり込んでしまう。そして気がついたら、彼の「奇想のインナースペース」にドップリとはまり込んでいるのだ。
 クローネンバーグは好き嫌いがはっきりと別れる監督だが、彼が嫌いな人はこの「強引さ」が不快なのだろう。

 しかし、それにしても、どうして彼の作品は季節がいつも「冬」なのだろう。どの作品でも雪が降っていたり、オーバーを着ていたり、曇天だったりと寒々としている。「カナダは寒いから」という理由以外の意味がある筈だが、それはおそらく主人公たちの心象風景を反映しているからだろう。
 彼の作品の主人公たちは、そのほとんどが自滅して行くのだ。
 本作のヒロインも、己れが招いた禍いの煽りを喰らって自滅する。彼女には終始感情移入できないが、そのあまりにも悲劇的な死は、かなりショッキングである。


↑冷蔵庫に隠れちゃダメ!。


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