本作を観るまでは岸田森が我が国で唯一のドラキュラ俳優かと思っていたが、そんなことはない。天知茂もどうしてなかなか、様になっておりますよ。
山本迪夫監督が『血を吸う眼』で岸田森をドラキュラに抜擢した理由が、
「植物的だったから」。
天知茂も実に植物的な人で、だからこそ様になっているのだろう。
しかし、本作の内容はというと赤点気味であるのがなんともはや。
天知演じる竹中は、天草四郎の遺児、勝姫の小姓で、勝姫自害の折りにその生き血を吸ったために吸血鬼として永遠の生命を得るに至った。数百年生き長らえた竹中は、勝姫の面影が忘れられず、その子孫である松村美和子(三原葉子)を誘拐して、天草の栄華を今日に取り戻さんととする物語。
天知の演技は実にクールなのだが、設定がドメスティックなので、無国籍なショッカーになってないのがマイナス。
しかも、彼には醜い小人(『江戸川乱歩の一寸法師』の和久井勤)にツルっぱげの大男、白髪の老婆という三人の下僕がいて、君は「怪物くん」か?。
天知ドラキュラが満月を見ると吸血鬼に変身するってえのも「狼男」との混同が甚だしい。
原作の橘外男は、江戸川乱歩と並ぶ「探偵小説」の草分けだが、これはあまりよい出来ではない。(って原作は読んでないんだけど)
とにかく、天知茂がドラキュラになるってことだけで一見の価値がある作品であった。
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