私が小学6年から中学へと進学した頃の世はまさに「SFの時代」であった。『未知との遭遇』や『スターウォーズ』の世界的大ヒットで、それまでは子供のものとされていたSFが一躍注目を集めた。深作欣次までがSFを撮り(今思えば余りにも暴挙)、多くのSF関連書籍が創刊された。
かくいう私もそうした映画を見まくり、星新一を読破し、やがて筒井康隆に至り、その時点で、
「あっ、俺はSFではない」。
と気づき、SFの追っかけをやめるのであるが、続投されるSF映画はちゃんとフォローしていたし、伝説のSF雑誌『スターログ』も購読していた。
その『スターログ』誌上でいち早く紹介され、幻の作品としてマニアの間で語り継がれていたのが、この『SFレーザーブラスト』である。デビッド・アレンという人形アニメーターの紹介記事でユニークな造型のトカゲ型宇宙人の写真が掲載され、多くの者のSF心を掴んだのだ。
そんな時、まだ「SF」だった友人の安田が興奮して云った。
「今度、東京12チャンで『レーザーブラスト』をやるんだよ」。
「何それ?」。
「ほら、トカゲが光線銃撃ってるやつ」。
「ああ、あれかあ。でも、あれ、そのシーン以外はたいした映画じゃないらしいじゃない」。
「でも、プレミア映像だから、きっと見ろよ」。
で、見た。(放映題は『SFエイリアンスペース』)
驚いた。トカゲ型宇宙人はどこにも出て来なかった。つまり、東京12チャンネルはこの駄作SF唯一の見どころをそっくりカットしてしまったのだ。次の日、安田は激怒していたが、私は可笑しくて仕方がなかった。いかにも12チャンらしいエピソードだ。
なお、これは後に判ったことだが、この日、日本全国のSFマニアが激怒していたという。12チャンネルに抗議文を送りつけた人もいたらしい。
『レーザーブラスト』は数年後、我が国でも「完全ノーカット版」と銘打ってビデオ化されたが、その頃には安田も私も「SF」ではなくなってしまっていたので見ていない。この映画については「見たくても見られなかったトカゲ型宇宙人」の思い出と共に封印してしまおうと思っている。
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