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宇宙の7人
Battle Beyond the Stars

米 1980年 116分 カラー
製作 ロジャー・コーマン
監督 ジミー・T・ムラカミ
脚本 ジョン・セイルズ
出演 ジョージ・ペパード
   ロバート・ボーン
   シビル・ダニング
   ジョン・サクソン


 

《スターウォーズ》の直後、数え切れないほどの低予算スペース・オペラが銀幕を飾ったが、これもその一つ。あの黒沢明の《七人の侍》と、そのリメイクの《荒野の七人》をパクったことで、とりわけて記憶に残る作品に仕上がっている。しかし、数多の《スターウォーズ》モドキがそうであったように、特撮はヘナチョロ、物語は退屈。かろうじて「7人」の個性的な顔で鑑賞を可能にしている。

 まず登場するのが悪の支配者セイドアことジョン・サクソン。《燃えよドラゴン》でお馴染みの彼は、巨大な戦艦で惑星アーキアに降り立ち、惑星の明け渡しを命じる。これに畏怖したアーキア人たちは傭兵を雇うために一人の若者を派遣する、という《七人の侍》とまったく同じ設定。


 

 そして、最初に出会うのがカウボーイことジョージ・ペパード。不精者の貨物船の船長という設定は、もろハン・ソロのパクリである。《スターウォーズ》がなければ、彼のようなキャラクターがSF映画に出てくることはなかっただろう。当初から戦いに乗り気でなかった彼は、海賊から助けてもらった義理で、仕方なく戦いに参加する。しかし、ラストで考えを改め、ハーモニカを吹きながら特攻する、というおいしい役柄である。


 

 続いて、かつてジョン・サクソン一味に部族を全滅されて、復讐に燃える戦士ケイマン。彼の役柄は《スターウォーズ》でいえばチューバッカといったところか。ヒューマノイド型でない宇宙人が善玉になるのも《スターウォーズ》以降のことである。


 

 そして、そのケイマンの従者であるコペッグ。彼の登場シーンは少ないので、彼が7人のうちの1人であることは、うっかりしていると忘れてしまう。SF映画でヤリで戦うというのは斬新であるが、これも《スターウォーズ》でチャンバラやってたことからの連想であろう。


 

 ウリム&チュリムの兄弟は2人で1人の勘定。昔の矢追純一UFO特番やディーボのプロモに出て来た宇宙人とそっくりのメイクが笑いを誘う。そう。《未知との遭遇》でグレイ型の宇宙人が出て来る前は、これが「宇宙人の一般的な顔」だったのだ。彼らには耳がないので、野武士一味の超音波攻撃の生体バリヤーとして立ち、そのために疲労して、あっさりと死んでしまう。


 

 ウリム&チュリムとカブっているのがネスターと称する5人組。彼らはテレパシーで互いの意識や知識を共有している。カウボーイにソーセージをもらって、1人が食べると他の4人も口をウマウマするシーンが面白い。冷静な分析力を有する理路整然としたキャラクターで、《スタートレック》のスポックのパクリである。


 

 一匹狼の殺し屋ゲルトに扮するロバート・ボーンは《荒野の七人》にも出演しており、今回もほとんど同じような役に扮している。寡黙で冷血で、自分の腕を試すために戦いに参加する。ボーンと製作者のロジャー・コーマンとは58年の《恐怖の獣人》からの仲で、今回も二つ返事で出演が決まったであろうことが想像される。

 ちなみに、ロジャー・コーマン監督作《恐怖の獣人》はボーンがまだ無名だったころの主演作であるが、原始時代の話かと思わせておいて、実は核戦争後の未来の話であったことがラストで判るという《猿の惑星》の元ネタとなった作品である。


 

 最後に、三船敏郎が演じた菊千代役にエクスミンという女戦士。彼女の部族は太く短く生きることをモットーに、戦場で華々しく散ることを最大の美徳と考えている。戦争は彼らにとっては最大のスリルであり、娯楽であり、そんな浮かれた気分で参加するなッ、と断られたが、後からノコノコとついてきて、ここぞというところで華々しく散る。おいしい役である。演じるのはシビル・ダニング。それまで旧西ドイツのお色気映画を中心に活躍していたが、本作で注目されてハリウッドに進出することになる。

《関連人物》
ロジャー・コーマン