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イベント・ホライゾン
EVENT HORIZON

米 1997年 96分
監督 ポール・アンダーソン
脚本 フィリップ・アイズナー
出演 ローレンス・フィッシュバーン
   サム・ニール
   キャスリーン・クインラン
   ジョエリー・リチャードソン


 最近のハリウッド映画はそのほとんどが「どこかで見たことがある感」に支配されているが、本作ほど「この感」が強い作品も珍しい。要するに、様々な過去の作品のパッチワークのみで成り立っているのである。ここには新しいものは何もない。あるのは「引用」の洪水である。

 2040年、ワープ航法を可能にした画期的な宇宙船イベント・ホライゾン号が行方不明となった。その7年後、同号は海王星軌道上に姿を現す。救助へと向かったルイス&クラーク号の一行は、そこで「この世の地獄」を体験することになる.....。

 早い話が「幽霊船もの」のバリエーションである。まず、ここで思い出される元ネタが『ゴースト・血のシャワー』だ。また、遭難船探索ということで『エイリアン』も入っている。
 イベント・ホライゾン号には生存者は一人もおらず、残るのは無惨な屍体と惨劇の痕跡のみ。
「いったい何があったんだ!?」。

 と探索するうちに一行は、自らの「触れられたくない過去」の幻影(=事故死した息子、見殺しにした同僚等)に悩まされ始める。
 これなんか『フラットライナーズ』そのままだ。
 同行したイベント・ホライゾン号の設計者、ウィリアム博士などは自殺した妻のリアルな幻影に悩まされ、まんま『惑星ソラリス』の様相を呈する。


 で、いったい何があったのかというと、この船はワープ航法で「この世の果て=地獄」にまで行ってしまったのだ。そして、船自体が邪悪な生命体となって、再びこの世に戻って来たのである。
 さあ、ここからは物語は『シャイニング』へと突き進む。邪悪なものがウィリアム博士に取り憑いて、一行を惨殺し始めるのである。
 この惨殺の方法が、腹を縦一文字に切り裂いて、それを吊るしてはらわたベロベロ〜ンという『羊たちの沈黙』の如き。
「見ろ。これが地獄だ」。
 と、今や「ピンヘッド」状態のウィリアム博士(左写真)が見せつける「地獄」の光景はまさに『ヘルレイザー』そのまんま。ここまで同じだと怒る気も失せてしまう。

 いやあ、パクった、パクった、盛大にパクりまくりましたよ。大したもんだ。ここまでオリジナリィティがないといっそ清々しい。例えば、クライマックスで「血の洪水」が出てくると、
「おお、ちゃんと『シャイニング』やってるね」。
 とか、
「ワープ装置が幾何学模様だったのはパズルボックスのつもりだったんだ」。
 とか、いろいろと「マニアック魂」が刺激されて嬉しくなる。

 映画芸術的な観点からは最低には違いないが、当「最低映画館」的にはなかなか見どころのある作品ですぞ、お立ち会い。


備考

 本作は「まんま『スフィア』」だという話もあるが、私は『スフィア』を見ていないので、なんとも云えない。あしからず。


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