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結婚狂奏曲セクステット
SEXTETTE

米 1978年 91分
監督 ケン・ヒューズ
脚本 メイ・ウエスト
   ハーバート・ベイカー
出演 メイ・ウエスト
   ティモシー・ダルトン
   トニー・カーティス
   リンゴ・スター
   ジョージ・ハミルトン
   アリス・クーパー
   キース・ムーン
   ジョージ・ラフト


 大友克洋 に『EAST OF THE SUN, WEST OF THE MOON』という短編がある(『さよならにっぽん』所収)。
 うらぶれた飲み屋のママ、といっても小汚いババアなのだが、彼女が店の常連のバンドマン三人組に「ツケを帳消しにしてあげるから」とライブハウスの手配を依頼する。彼女が歌うというのだ。招待客30人はみな男ばかり。当日集まった年輩たちに訳を訊くと、小汚いババアは「リリー松橋」という往年のジャズ歌手で、招待客全員が「彼女の男」だったのだ。
 いかにも大友克洋らしい心暖まる作品だが、この映画によく似ているんだよなあ。
 しかし、この映画は日本未公開なので、大友氏が参考にした可能性は低い。発表されたのもほぼ同時期なので、神のいたずらで同時発生的に生み落とされた作品なのだろう。

 本作は、あのメイ・ウエストが1961年に上演した自作自演の舞台劇を映画化したものである。30年代のアメリカで露骨なセックスを売り物にし、世間の顰蹙を買っていた「元祖黒木香」たる姉御も当時86歳。それが「ハリウッドNO.1のセクシー女優」に扮するのだから、もはや笑ってしまうほかない。


 ハリウッド女優マーロ・マナーズが結婚した。6人目となる新郎は英国貴族で、二人はロンドンの一流ホテルで初夜を迎える。折しも、同ホテルは世界サミット会場として使用されており、アメリカのエージェントがマーロに接触する。実は彼女も「アンクル・サム」のために働くエージェントで、これまでイロを武器にして数々の諜報活動を行ってきたのだ。今回の指令はソビエト首脳を腑抜けにすること。任務を遂行する彼女のもとに前夫たちが続々乱入、サミットがメチャクチャになるというドタバタ艶笑劇である。
 で、最後にサミットにいる全員が「彼女の男」だったというオチがつく。
「坊やたち、秘密をバラされたくなかったら仲良くおしなさい」
 と各国首脳をたしなめる老婆の貫禄には圧倒される。

 しかし、それにしても共演が実に豪華だ。メイ・ウエストというばあさんが如何に皆から愛されていたかが判る。
 まず、6人目の夫に「4代目ジェームス・ボンド」のティモシー・ダルトン。
 3人目の夫にトニー・カーティス。
 4人目の夫にリンゴ・スター。
 5人目の夫にジョージ・ハミルトン。
 それから、ジョージ・ラフトに「ザ・フー」のキース・ムーン。
 驚きなのは、アリス・クーパーの出演シーンである。あのいつもオドロオドロしいおっちゃんが、ここではさながらバリー・マニロウの如く爽やかにピアノで一曲披露するのだ(左写真)。初めて見た時はこれが彼だとは気づかなかった。

 なお、メイ・ウエストはこの2年後に他界した。つまり、これは彼女の「さよならのおみやげ」だったのである。


関連作品

マイラ(MYRA BRECKINRIDGE)


 

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