チェンジリング
THE CHANGELING
カナダ 1979年 107分
監督 ピーター・メダック
原作 ラッセル・ハンター
出演 ジョージ・C・スコット
トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー
メルヴィン・ダグラス
ヒカシューの『パイク』がテーマ曲だというので、興味本位で観に行った。そしたらこれが面白いのなんの。本来なれば「最低映画館」などで上映されるべき映画ではないが、その面白さの割りには知名度が低いようなので、クレームを承知で紹介しよう。
本作は概ね三部構成になっている。
まず、第一部は古典的な「幽霊屋敷もの」である。
交通事故で妻と娘を失った音楽家=ジョージ・C・スコットは、傷心を癒すために新天地へと移り住む。彼が借りた屋敷は築100年は経っていようかという文化財で、しかし「家が人を拒む」という理由から、長年空家になっていた。彼はもちろん、そんなことは知らずに借りた。そして、様々な怪奇現象に悩まされることになる。
極めつけは毎朝6時になると必ず鳴り響く金属音。鉄を叩くような音がドーン、ドーン、ドーン、ドーンと30秒ほど鳴り響く。これはさすがにただごとではないと霊媒師を呼んだ主人公。そして、問題の「金属音」が何であったのかを「霊」から明かされることになる。
この家では70年前に病弱な男の子が父親に殺されていたのだ。
さて、第二部は「推理劇」である。
幼い娘を失ったばかりの主人公は、男の子の霊に同情し、なんとか助けてあげたいと奔走する。屋敷の過去を調べ上げ、男の子が誰なのか、そして、その埋葬場所を突き止める。その過程で、男の子がどうして殺されたのかが次第に明らかになって行く。
そして、第三部は「オカルトもの」。
主人公は男の子の死が現上院議員と関係していることを突き止める。しかし、事件は70年も前のこと。彼にはこれ以上どうしようも出来ない。なんとかしろーッと暴れまわるダダッ子のような霊を怒鳴りつける主人公。
「うるさいぞッ、このガキッ。やることはやったじゃないかッ」
幽霊を怒鳴りつけるジョージ・C・スコットも物凄いが、幽霊の怨念たるや、また物凄い。「ならばオイラがやらねばなるめえ」と超常的な力をフルに駆使して、見事復讐を遂げるのであった。
「一粒で三度おいしい」映画である。真相が次第に明らかになる様が探偵小説のようにスリリングで、且つ、ちゃんとショック描写も押さえている。
私が特にギョッとしたのが「ゴムボール」の件。
屋敷での怪奇現象はすべて己れの心の病だと思い込もうとした主人公は、娘のことはもう忘れようと、その遺品のゴムボールを川に棄てる。屋敷に帰って階段を見上げると、さっき棄てた筈のゴムボールが「トットットットッ」と跳ねながら降りて来るのだ。
あの巨漢のジョージ・C・スコットでさえも壁にへばりつく怖さである。
棄てた筈のものがまた出て来るってのは鈴木光司も『仄暗い水の底から』でやっていたが、こちらの方が見せ方が遥かにうまい。
とにかく、傑作である。観るべし。
ところで、ヒカシューの『パイク』はテーマ曲でも何でもなく、配給会社のジョイパックが話題作りのために、最後に無理矢理挿入しただけのものだった。この映画で『パイク』が聴けたのは、劇場で観た人だけである。
↑かなりショッキングな幽霊の登場シーン。
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