ヒッチコックの『サイコ』は数多の亜流を生んだが、オリジナルに比肩し得るのは唯一本作のみである。否。本作にはオリジナルとしての風格さえ備えている。それほどに素晴らしく、斬新で、恐ろしい。
或る閑静な住宅地に住む二人の老姉妹。姉のブランチは下半身不随の車椅子で、妹のジェーンが面倒を見ている。
この二人はかつての映画女優で、特に姉のブランチは一世を風靡するほどの大スターだった。かたや、妹のジェーンはというと、子役時代にはベイビー・ジェーン人形が売られるほどの人気者だったが、性格の悪さが祟って急降下。ブランチの口ききで役がもらえるほどにまで落ちぶれていた。そんな二人が銀幕から消えた原因は、ブランチが被った交通事故。ジェーンがブランチを憎み、轢き殺そうとしたのだと噂された。
二人は世間から忘れ去られたが、60年代に入り、テレビで名画劇場が放映されるようになると、ブランチの人気が再燃した。テレビ局経由で送られてくるブランチへのファンレター。これがジェーンには面白くない。ブランチへの憎悪を募らせたジェーンは、次第に常軌を逸していくのであった.....。
この映画の成功は、主人公の老姉妹に往年の名女優を配したことにある。
まず、ジェーンにはベティ・デイヴィス。2度のアカデミー賞受賞歴のあるこの名優の熱演なくして本作は成立しない。とにかくグロテスク。特殊メイクなくしてここまで不快にさせてくれる女優は他に思いつかない。少女時代に退行したジェーンが踊り狂うシーンは映画史上屈指の衝撃映像である。
そして、ブランチにはジョーン・クロフォード。後に幼児虐待の事実が養女によって暴かれた彼女は、ここでは受け身に徹して、デイヴィスの怖さを煽っている。
監督は名匠ロバート・アルドリッチ。彼のようなトップクラスが監督したからこそ、上の2大女優が出演を快諾したのだろう。多彩な監督で、あらゆるジャンルをものにしているが、その多彩さがゆえに今一つカルト化しない損な監督である。
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