パム・グリア
PAM GRIER（1949- ）

《出演》
＊残酷女刑務所（1971）
＊ビッグ・バード・ケイジ（1972）
＊半獣要塞ドクター・ゴードン（1972）
＊コフィー（1973）
＊ブラック・ママ・ホワイト・ママ（1973）
＊吸血鬼ブラキュラの復活（1973）
＊フォクシー・ブラウン（1974）
＊シーバ・ベイビー（1975）
＊フライデー・フォスター（1975）
＊アパッチ砦ブロンクス（1981）
＊刑事ニコ／法の死角（1988）
＊クラス・オブ・1999（1990）
＊エスケープ・フロム・ＬＡ（1997）
＊マーズ・アタック！（1997）
＊ジャッキー・ブラウン（1998）

　ひし美ゆり子とパム・グリア。
　この二人、私にはとても似ているように思える。
　まず、二人ともＢ級女優である。お色気アクションを得意としてきた。しかし、８０年代に入り、フェイドアウト。そして、９０年代後半から人気が再燃している。
　彼女たちに憧れて育った子供たちが今、社会の中堅を担うようになり、忘れられた彼女たちに再びスポットをあてることが出来るようになったのである。
　しかし、ひし美ゆり子はともかく、パム・グリアの軌跡は、我が国ではほとんど知られていない。そのほとんどの作品が劇場未公開だからである。彼女の主要作品を輸入ビデオで鑑賞し、心酔しいている私としては、なんとも歯痒くて仕方がない。

　かつて７０年代に「女囚映画」と呼ばれるジャンルが存在した。前半は残酷な拷問の数々、後半は女囚たちの叛乱を描いたどれも同じ内容なのだが、その原型となったのがロジャー・コーマン製作、ジャック・ヒル監督の『残酷女刑務所』。私の記憶によれば、これがパム・グリアの実質的デビュー作である。
　Ｂ級映画の帝王、ロジャー・コーマンの秘蔵っ子だっただけに、パムは極めて稀な逸材であった。黒人なのに白人のような風貌。それも驚くほどの美形である。しかも、完璧なプロポーション。そして、何よりも度胸がある。ロケ地であるフィリピンの泥沼で堂々とキャットファイトを繰り広げる。このシーンが評判となり『残酷女刑務所』は大ヒット。気をよくしたコーマンは、今度はパムを主役に据えて続編を製作。『ビッグ・バード・ケイジ』がそれだが、まったく同じ内容なので、これは観なくてよろしい。

　２本の「女囚映画」で名を売ったパムは、三たびジャック・ヒルと組んで、アクション女優としての地位を不動にする。『コフィー』である。「女必殺仕置人」として麻薬ディーラーを殺しまくるその勇姿は、『エイリアン』のリプリーや『ターミネーター』のサラの原型であることは間違いない。

　続くパムの主演作は初めてヒルの手から離れた『ブラック・ママ・ホワイト・ママ』。内容はあばずれ版「手錠のままの脱獄」。パムはもちろん「ブラック・ママ」の方である（笑）。豪速球のタイトルに思わず顔が綻ぶが、当時の黒人映画（ブラックスプロイテーション）はみんなこんな調子だった。『ボス・ニガー』とか『吸血鬼ブラキュラ』とか。そこにあるのは脳天気な黒人ヨイショのみで、人種差別に鋭く切り込む作品は１本もない。本作もパムとマーガレット・マーコフ（ホワイト・ママ）が、ただひたすらにお色気キャットファイトを繰り広げるのみである。

「私、たいした女優じゃないのよ。だって、ろくな映画に出ていないんですもの」

　たしかに彼女はロクな映画に出ていない。再びジャック・ヒルと組んだ『フォクシー・ブラウン』は、作品的には面白いが『コフィー』の二番煎じの感は否めない。続く『シーバ・ベイビー』や『フライデー・フォスター』となると、もう亜流もいいとこで、観客も飽き始める。翌年には黒人映画自体がフェイドアウト。以降、パム・グリア低迷の時代が続く。

　そんな中でひときわ輝く作品がある。ポール・ニューマン主演の社会派映画『アパッチ砦ブロンクス』である。ここで彼女は殺人狂の娼婦を演じ、強烈な印象を残す。かくしてアクション女優から個性派へと転身したパムであったが、『クラス・オブ・１９９９』でのロボット先生あたりを最後に銀幕から消えてしまう。なんと、癌を患っていたのだ。

「今生きていること自体が奇跡に思えるわ。だって私、あと１８ケ月の命だって宣告されたのよ」

　しかし、彼女は不死鳥の如く復活した。タランティーノの『ジャッキー・ブラウン』でファンを狂喜させた彼女は、今後も我々を魅了し続けるであろう。

残酷女刑務所
半獣要塞ドクター・ゴードン（THE TWILIGHT PEOPLE）
コフィー（COFFY）
フォクシー・ブラウン
フライデー・フォスター
アパッチ砦・ブロンクス（FORT APACHE, THE BRONX）
悪魔の改造人間（THE VINDICATOR）
クラス・オブ・1999

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