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復讐 THE REVENGE
消えない傷痕
the Revenge

日本 1997年 80分
監督 黒沢清
脚本 黒沢清
出演 哀川翔
   菅田俊
   小林千香子
   逗子とんぼ
   井田州彦
   しみず霧子
   諏訪太朗
   下元史朗
   大杉漣


 

《復讐/運命の訪問者》の続編である。前作もかなり変な作品だったが、こちらはさらに変である。

 妻を殺害された安城は、刑事を辞職し、今では復讐の鬼と化していた。直接手を下した殺し屋一味を皆殺しにするも、その背後にダム建設を巡る闇資金ルートがあることが判明する。一方、そのルートを追う若手刑事の西は、安城の復讐を阻止しようと躍起になる。
「安城さんの気持ちは判ります。しかし、彼らの制裁は私に任せてください」。
「よおし。お前が逮捕するか、俺が殺すか、競争だ」。
 そして、安城は遂に黒幕を突き止める。ところが.....。

 と、あらすじだけだとオーソドックスな復讐ものだが、黒沢清の力点はむしろ、サイドストーリーである筈の主人公と躁鬱症気味の組長の奇妙な友情物語に置かれているのである。しかも、その描写はだらだらとメリハリがない。だから、途中でいったい何の話やら、さっぱり判らなくなるのである。
 この件に関して、黒沢監督はこのように述べている(『映画秘宝』vol.21より引用)

「それまで僕は頑固なジャンル主義者で、構造は少し崩しても、ジャンルのスタイルを守ろうとした時期があった。(中略)ちょうどその頃、篠崎誠という友人が《おかえり》を撮って海外の映画祭で賞をとりまくった。青山真治という後輩が《Helpless》を撮って海外の映画祭に行ったというのを聞いて「あれ?。なんで?。どうして?」という思いが(笑)。篠崎の映画は特に「君、普段言ってることと全然違うじゃないか、やってることが!」(笑)。頭がいいというのはこういうことを言うかというのを目の当たりにしました。つまり彼らは、映画にジャンルがあることは充分わかりつつ、海外の人は今どきの日本映画にそんなものを望んでいない、ましてやアメリカ映画の古典的なスタイルなど求めてないことをちゃんと知っていた。そこで彼らはジャンルを取っ払い、今の日本にある日常的な空間や普通の人間の生活を積極的に取り組んだ。普段「そんなことはつまらない」って言ってたくせに何だ!(笑)。そこで僕も1回やってみようと思って。
 そこで《復讐/消えない傷痕》でジャンルの掟を外し、「だらだらと日常を生きてます」という描写を盛り込んだ。篠崎や青山もやってるし(笑)。すると案外イケた(笑)。こういうのもアリだ、なるほどなあ、皆ちゃっかりしてるわと思って(笑)。まさにその後に撮ったのが《CURE》です」。

 なるほど。だから主人公と組長はあんなにだらだらしていたのか。
 そして、だらだらしているからこそ、主人公の復讐シーンはいっそう緊張感が増し、また、後半で組長が壊れてしまう局面がいっそう衝撃的になるのであるなあ。
 とにかく、この作品の奇妙さは言葉では説明できないよ。だらだらしている間にバネがきりきりと巻かれ、次の場面でバーンと弾ける感じ。
 主人公の哀川翔よりも、最後に壊れて弾けてしまう躁鬱症気味の組長が実にいい。演じる菅田俊は《殺し屋1》でタランティーノに見込まれて《キル・ビル》に抜擢されました。