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リフレジレイター/人喰い冷蔵庫
REFRIGERATOR

米 1992年 90分
監督 ニコラス・A・E・ジェイコブス
脚本 ニコラス・A・E・ジェイコブス
出演 ジュリア・マクニール
   デヴィッド・シモンズ
   アンゲル・キャバン


 この映画は難しいなあ。
 いや、「難解な映画」という意味ではなくて「面白い紹介文を書くのが難しい映画」という意味だ。「大喜利で出されたセンスのないお題」に例えれば判って頂けるであろうか。とにかく、あらゆる意味で中途半端で、「こんなお題にどう答えればいいんだよ」と途方に暮れる。
 徹底的にシドい映画であるならば、その方向から攻めることが出来る。しかし、この映画、割と見どころがあるのだ。
 例えば、ヒロインが鍵をなくして、部屋中引っ掻き回しても見つからない。大事な約束の時間に間に合わなくてへたり込むと、背後の冷蔵庫がギーッと開く。なんと、なくした鍵はそこにあったのだ.....ってな描写、この手の映画に慣れている私でさえも「おおっ、これはうまいな」と手をポンと打つほどによく出来ている。
 では「隠れた傑作」と称して褒めることが出来るかといえば、そんなこと到底出来るようなシロモノではない。内容がガチャガチャで、何を云わんとしているのか、さっぱり判らない。
 世評はどうなのだろうかとインターネットで検索すれど、正面から論じているものは一つもない。やはりネット界でも鬼っ子のような存在なようだ。ただ唯一「おバカ映画かと思ったら意外にマトモで失望」という評がこの映画を語り尽くしているような気がした。


 本作はなんでもマドリッド国際映画祭で最優秀脚本賞と評論家特別賞を、ヒューストン国際映画祭で金賞を受賞しているとかで、まあ、あまり聞いたことのない賞だけど、どこぞの賞を取ってもおかしくないくらいのクオリティではある。ちょっと見ればトロマあたりの「おバカ映画」とは違うことぐらいは俺でも判る。だから、最初はちょっと期待したんだな。ひょっとしたら傑作かもって。

 オハイオ州に暮らす典型的なWASPの若夫婦が、家賃が安いっていうだけの理由で、ニューヨークはヒスパニック系居住区のアパートに越してくる。
 ここら辺の設定が、私に期待させた要因である。
「この映画はひょっとしたら、人喰い冷蔵庫に名を借りた、人種問題に鋭く切り込む社会派ドラマなのかも知れない」と。
 ところが、ヒスパニックの部分が反映されるのは、あくまで上辺だけ。結局、誰もがぶつかる夫婦間の倦怠期の問題に重点が置かれ、精神的に疲労した妻が狂気に至るという「ローズマリーの赤ちゃん」状態になり果てる。その狂気を煽るのが「人喰い冷蔵庫」であり、別に冷蔵庫に本当に悪魔がとり憑かなくてもよい話である。ここは、例えばポランスキーの『反撥』のように、すべてが心の病んだ妻の妄想としてもよい話ではなかったか?。
 しかし、それでも部分的に見るべき描写はあることはあり、そのためにどう評価してよいのやら、途方に暮れる作品となっているのである。


 

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