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オリーヴ・トーマス
OLIVE THOMAS
(1894-1920)


 オリーヴ・トーマスの死はハリウッドを揺るがす最初の大スキャンダルだった。彼女の死をもって悪徳の都「ハリウッド・バビロン」の扉は開いた。

 1920年9月10日、一人のうら若き女性がパリのホテルで塩化水銀を飲んで自殺した。彼女の名はオリーヴ・トーマス。清純だがお転婆な「アメリカの妹」として人気を博した国民的アイドルだった。しかも、彼女は大女優メアリー・ピックフォードの弟ジャック・ピックフォードと結婚したばかりだ。自殺の原因など到底考えられなかった。
 ところが、捜査が進むにつれて、彼女の意外な素顔が明らかとなった。彼女がパリに渡ったのは、仕事のためでも観光のためでもなかった。彼女は夜な夜な如何わしいナイトクラブに出没し、ヤクザ者たちとなにやら交渉していた。この情報を受けてマスコミは、以下のように憶測した。
「彼女の夫ジャック・ピックフォードはヘロイン中毒であり、彼女は夫のためにパリに渡り、ヘロイン調達に暗躍した。しかし失敗。責任を感じた彼女は、失意のうちに自殺した」
 ところが後日、さらに意外な事実が判明する。彼女の自殺の数週間前、FBIはスポールディングなる陸軍大尉を逮捕していた。彼は上流階級への麻薬の売人だった。その手帳に記された顧客リストを調べる捜査官は、そこに意外な名前を発見した。
「オリーヴ・トーマス」
 ジャンキーなのは夫ではなく妻の方だったのだ。売人が逮捕されてオリーヴはヘロインを求めてパリに渡る。しかし、入手できずに落胆し、禁断症状の中で自殺する。これが「アメリカの妹」オリーヴ・トーマスの死の真相だった。

 この事実を知ったアメリカ市民は愕然とした。そして、可愛い妹をジャンキーにした悪魔を怨んだ。
 ハリウッド。
 ハリウッドこそが清純無垢な少女を汚す悪の巣窟と看做された。以後、ピューリタンたちはハリウッドを「ソドムとゴモラ」に準え、風紀を紊乱する悪徳の都として糾弾した。『危険なハリウッド』なる小冊子が出回り、教会は映画を見ることさえ禁じた。
 そんな風潮の中で一人のコメディアンが逮捕された。ロスコー・アーバックル。その容疑は、なんと強姦殺人だった。


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