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評価 ★★★★★

キートンの強盗騒動(悪太郎)
THE GOAT

米 1921年 23分
監督 バスター・キートン
   マル・セント・クレア
出演 バスター・キートン
   ヴァージニア・ファックス
   マル・セント・クレア


 旧邦題『悪太郎』のこの作品で、キートンは無実の罪で指名手配される男の悲喜劇を描いた。奇しくもその公開の4ヶ月後、ロスコー・アーバックルが無実の罪で逮捕される。容疑は強姦殺人だった。
 キートンは親友のために証言台に立とうとしたが、アーバックルの弁護人に断られてしまう。ハリウッド・スターの証言はかえって陪審員の心証を悪くすると判断されたためである。
 アーバックルは最終的に嫌疑を晴らした。が、コメディアンとしてのキャリアは終わった。

「ロスコーを待ち受けていたのは半狂乱の群衆だった。少し前まではあれほど好きだった男に向かって、彼らは罵声を浴びせた。『ひとごろし!』『けだもの!』『へんたい!』。ロスコーはこの恐ろしい経験を決して忘れることができなかった」

 ジョー・スケンクは、アーバックルのための会社だった「コミック・フィルム・コーポレーション」を「バスター・キートン・プロダクション」と改めなければならなかった。しかし、アーバックルを見捨てたわけではない。キートン映画の総利益の35パーセントがアーバックルに支払われるよう取り計らったのである。また、スケンクは1923年にアーバックルのための会社「リール・コメディ・インコーポレーテッド」を設立。アーバックルはここで「ウィリアム・グッドリッチ」の名で短編を監督することで糊口を凌いだ。
 キートンとスケンクは、アーバックルの単なるビジネス・パートナーではなかった。彼らは真の友として生涯に渡ってアーバックルを支え続けた。キートンにとっては、それは自らを映画の世界に引き入れてくれたことへのささやかな恩返しであった。


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