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カナダ 1982年 107分
製作 ピエール・デヴィッド
監督 ジャン=クロード・ロード
脚本 ブライアン・タガート
出演 マイケル・アイアンサイド
   リー・グラント
   リンダ・パール
   ウィリアム・シャトナー


 これはなかなかよく出来たサイコ・スリラーの佳作。脚本や演出も上々である。しかし、何といっても、サイコ・キラーに扮するマイケル・アイアンサイドが圧倒的だ。彼が演じていなければ、本作はこれほどには面白くはならなかった筈だ。

 ドメスティック・ヴァイオレンスが故に夫に発砲、殺人罪で告訴された女性の弁護を、或る女性キャスターが買って出た。自らの番組で正当防衛を主張し、世論に訴えて社会問題にまで発展していた。
 これを面白く思わない男がいた。彼の父親もドメスティック・ヴァイオレンスの報復を受け、顔に煮立った油をかけられて大火傷を負っていたのだ。父親を不具にしたばかりか、自分まで置いて逃げ出した母親を彼は憎悪し、高じて全ての女性を憎悪するようになった。
「夫を殺した妻を弁護するとは何事だ!」
 彼は女性キャスターを憎悪し、彼女の殺害を決意するのであった。


 このような御膳立ての後は、キ印男の執念と超人的な行動力が物語をグイグイとひっぱり、最後まで飽きることなく楽しませてくれる。
 初めての接触では女性キャスターを負傷させるに留まり、以降は彼女の入院先を舞台にいろいろと殺し、それが露見して病院は大騒ぎ。警官隊がグルリと取り囲む厳戒体制が取られるが、それでもキ印男は諦めず、ビール瓶を素手で叩き割って負傷して、救急車で運ばれて病院に侵入する。その執念と行動力は、敵ながらアッパレである。

 自傷してまで病院に侵入する、なんてことは他の役者では説得力がないが、アイアンサイドなればいかにもやりそうなことであり、その意味でも彼でなければならなかった作品である。
「最低映画館」の御常連なれば云うまでもないだろうが、アイアンサイドは『スキャナーズ』で注目されたカナダの役者で、続く本作での演技が認められてハリウッド入り。その後の活躍は御案内の通りである。

 共演のリー・グラントとリンダ・パールも熱演しているが、カーク船長ことウィリアム・シャトナーはなんとも冴えない。今日、再見するまで、彼が出ていたことなど忘れていた。男優に関しては、アイアンサイドが美味しいところをすべて持って行ってしまっている。


 

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