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ヘンリー
HENRY : PORTRAIT OF A SERIAL KILLER

米 1986年 83分
監督 ジョン・マクノートン
脚本 リチャード・ファイア
   ジョン・マクノートン
出演 マイケル・ルーカー
   トム・トウルズ
   トレイシー・アーノルド


 極めて不愉快な映画である。
 主人公のヘンリーは淡々と、あたかもそれが義務であるかの如く人を殺して行く。同居人のオーティスを仲間に引き入れる時、彼はこのようにアドバイスする。

「いつも同じ銃で撃てば、指紋と同じで足がつく。だけど、一人は絞め殺し、一人は刺し殺せば足がつかない。サツは事件を類型化したがるんだ。だから、常に殺し方を変え、常に移動し続けること。これが肝心だ」。

 その通りなのだが、殺し続けなければならない理由がさっぱり判らない。
 快楽のため?。
 今や相棒となったオーティスはそのようだ。大はしゃぎである(左写真上)。ところが、ヘンリーはというと、それだけではなさそうだ。どうも彼は殺し続けなければならないという強迫観念に取りつかれているようなのだ。彼は今日もつまらない仕事をこなすかの如く人を殺す。その表情からは彼の心がまったく窺えない。だから不愉快なのであり、監督の狙いもそこなのだ。
 殺人という行為の異常性をここまで描き切った映画は他に類を見ない。これを観て「人を殺したい」と思った者がいるとすれば、彼はヘンリーと同類のキチガイである。それほどにこの映画は主人公への感情移入を許さないのである。

 なお、ヘンリーに扮したマイケル・ルーカーはその後にメジャーに進出したが、それはこのインディペンデンス映画が4年間もオクラ入りしたおかげである。これでスクリーン・デビューを飾ってしまったら、『ダーティーハリー』のスコルピオ役で「漕げよ漕げよ」と大暴れしたアンドリュー・ロビンソンのようにキチガイの代名詞になってしまったことだろう。ルーカーに関する限りではオクラ入りはラッキーだったのである。


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