その滅茶苦茶ぶりで世間を騒然とさせた『発狂する唇』の続編的作品。ギャグ映画としてはこちらの方が面白い。というのも、前作では正当派のホラー映画かと思わせておいて、それを次第に破綻させていく作りだったのだが、本作では冒頭から破綻しまくっているのだ。ハナから観客を混乱させ、その混乱ぶりで笑いを取ろうという腹で、観客もそれを承知で見ているので、あらすじを書くのはヤボってえもんだ。
しかし、発端を書かないと説明できないので、とりあえず書いてみる。
ヒロインの娘が誘拐された。警察が逆探知装置を取り付けたりとドタバタしているところへ前作の「謎の霊媒師」が登場。またしても「首なし少女の霊」を呼び出して、犯人を追跡させるのであった.....。
と書いていると、案外マトモに思われるかも知れないが、物語自体がヒロインの回想であるにもかかわらず、その中に別の登場人物の回想や夢オチがあったりするのだからたまらない。観ているこちらのアタマもおかしくなってくる。まさにキチガイの妄想をそのまま映画化したような作品なのだ。
前作に登場した「自称FBI」のコンビも再度登場(ルーシーは死んだ筈なのだが.....)。彼らから「これは宇宙人の仕業だ」と告げられてからは前作を上回る暴走を繰り広げ、亀山パンチという大阪弁の代議士がセクハラするわ、『リング』の中田秀夫監督がMIBとして登場するわ、『CURE』の黒沢清監督がキチガイ博士として登場して毒ガスひっくり返して大騒ぎになるわ、その毒ガスで扇千景そっくりのおばさん大臣が悶死するわ、ヒロインがスプラッター歌謡「君がほしい」そっくりの編曲のド演歌を唄うわ、またしてもカンフー合戦が始まるわと、もうどうにでもしてくれって感じだ。
前作のヒロイン三輪ひとみも「自称FBI」の阿部寛の恋人役として登場する。実は彼女は宇宙人で、
「今度、あなたと会う時は、私は違う姿をしているでしょう」
と云い残して去っていく。
半年後、失意の阿部寛にハゲ頭の下品な男(諏訪太郎)が、
「よお、久しぶりだなあ」
「失礼ですが、どなたですか?」
「俺だよ、俺。ひ、と、み」
「ええっ!?」
「お前、俺の左の乳首ばかり吸ってたろ。おかげで左の乳首だけとんがっちゃってさあ」
この屈辱的な体験が彼に「宇宙人への憎悪」を募らせたという回想話で、このシーンが一番笑えた。
なお、本作のヒットを祝して、上映中に急遽製作された10分のデジカメ映画『血を吸う宇宙外伝/変身』は、「三輪ひとみが如何にして諏訪太郎になったのか?」を描いた作品。共演は柳下毅一郎に中原昌也という「身内の学芸会映画」であった。
「きーぷ・うぉっちんぐ・ざ・すかーいッ!」(by ルーシー)。
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