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発狂する唇

日本 1999年 82分
監督 佐々木浩久
脚本 高橋洋
出演 三輪ひとみ
   夏川ひじり
   吉行由実
   鈴木一真
   由良宜子
   下元史朗
   諏訪太朗
   栗林知美
   阿部寛
   大杉漣


 脚本が『女優霊』や『リング』の高橋洋なので、これもホラーかと思ったら大間違い。しっちゃかめっちゃかのモンド・ムービーでありました。

 少女連続殺人の容疑で指名手配されている男の家族=母と2人の妹は今日もマスコミの非情な取材攻勢に耐え忍んで暮らしていた。そんな中、末の妹の三輪ひとみが兄の居場所の探索を胡散臭い霊媒師に依頼。被害者たちの霊を四十九日前に呼び出したことから、彼らの生活が次第に狂い始めた.....って、こんなあらすじ、書くだけ無駄である。伏線らしきものはすべてうっちゃられて、物語はあさっての方角に飛んでいってしまうからだ。
 特に阿部寛と栗林知美が扮する自称FBIの奇妙なコンビが登場してからの暴走は著しく、ヒロイン三輪ひとみがお花畑で唐突に伴奏付きで唄い始めるわ(これがまた凄まじい音痴)、かと思えば、兄さんを見つけるためだと諏訪太郎の首吊り屍体と屍姦させられるわ、その背後から同時にアナルも犯されるわ、実は真犯人は母と2人の妹だったりするわ(どうして?)、挙げ句の果てに、犯人一家が被害者の遺族たちとカンフー合戦を繰り広げるのである。ここまでデタラメな映画、私は見たことがない。

 高橋洋は『映画秘宝』誌インタビューで「新東宝の線を狙った」というようなことを語っていた。たしかに、この胡散臭さは新東宝のものだ。しかし、それよりも「中学生の映研映画」に例えた方がしっくりくる。エロありグロあり唄ありカンフーあり。中坊の好きなものをすべてブチ込み、ドロドロに煮込んだ闇鍋映画。いい大人がよくもまあこんなものを真剣に作ったもんだと呆れる。

 特筆すべきは栗林知美の怪演であろう。自称FBIのルーシーは、金髪だがわざとらしい英語を話す。「本当にアメリカ人かよ?」と疑いたくなる怪しい女だ。機関銃片手にアメリカ国歌を高らかに歌う様には圧倒されるが、三輪ひとみのアナルを犯した下元史朗に強姦された上に金髪の頭皮をはがされる。
 相棒の阿部寛もハンサムぶりを逆手に取って、怪しさを撒き散らしている。このコンビが「決して怪しい者じゃないから」と云う科白はかなり笑える。誰がどう見ても怪しいって。
 その上司の大杉蓮も凄いなあ。パンツの中に巨大な張り形入れて、ルーシーと共にエアロビクスを踊り狂うのだよ。ラストには張り形くわえた後、拳銃くわえて自殺します。

 とにかくめちゃくちゃなので、真面目な人が見ると腹が立つこと必至である。


 

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