一言で云えば「アイドル映画」である。実在の芸能人が事件に巻き込まれるのである。しかし、その「アイドル」がクセモノ芸人であったために、他の「アイドル映画」とは一線を画する作品に仕上がっている。
ペン&テラーは、日本で云えばナポレオンズに相当するのであろうか。コミック手品のチームである。しかし、その芸風はかなり過激で、ステージはいつも血みどろだ。18禁のカルト芸人なのである。
チビのテラーはまったくしゃべらない。反面、デブのペンはのべつ幕なしマシンガンのようにしゃべりまくる。やることなすことアナーキーで、まさに現代のマルクス兄弟である。
そんな二人がハマっているのがプラクティカル・ジョークである。互いにハメ合いバカシ合って楽しんでいる。最初のうちは空港の金属探知機でイタズラするようなかわいいものだったが、次第にどんどんとエスカレート、遂には己れらの命を脅かすことになる。
映画の前半は正直云ってたわいもないが、中盤からどこまでがジョークなのか判然つかなくなり、そして迎える最悪の大団円。オチがあるのかと思ったら、
「へへん、オチがあるかと思ったろ?。でも、オチなんかねえんだよ、バカヤロ」
ってな感じで観客を突き放して終わる。エンド・クレジットの背景で繰り広げられる「死の連鎖」も圧巻である。
これまでに類を見ない「アイドル映画」であり、私的にはかなり評価が高いが、如何せん、所詮は「アイドル映画」。ペン&テラーが一般に知られていない日本では劇場公開されることはない。アーサー・ペンの監督作だというのに。
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