劇場に観に行ったら途中で打ち切られていた映画というのが私には2つあって、1つは『イレイザーヘッド』。あのデヴィッド・リンチのデビュー作で、前衛映画であるにも拘わらず『エレファントマン』の大ヒットに肖って公開。しかし、誰も観に行かなくて撃沈。私は友人に招待券を貰って学校帰りに観に行ったら、まだ2週目だというのに『スキャナーズ』に差し換えられていた。
もう1本が本作『エリック・ザ・バイキング』である。監督がプロモーションで来日したにも拘わらず、配給会社=ヘラルドはてんでヤル気がなく、ロクな宣伝も行わなかったんだから仕方ない。2週目に行ったら、聞いた事もないアニメーション(外国製)に差し換えられていた。
おそらくヘラルドにはモンティ・パイソンに愛着のある社員が一人もいなかったのだろう。本作は「モンティ・パイソンの」と枕をつけてもいいような作品である。
まず、原作、脚本、監督、出演がパイソンの首領、テリー・ジョーンズ。
共演に、もう一人のパイソンの首領、ジョン・クリース。
それに『未来世紀ブラジル』の脚本も書いたパイソン系俳優チャールズ・マッキーワン(『バロン』で千里眼を演ってた人)。
おまけに、大のパイソン・フリークの関根勤(監督が日本人のコメディアンを探していると聞き、自ら売り込んだらしい)。
内容もほとんどパイソン映画と変わりなく(それもその筈。パイソン映画はテリー・ジョーンズが監督しているのだ)、パイソン・フリークとしては配給会社のヤル気のなさに歯痒い思いをしたもんだ。
で、劇場では観られなかったもんだからビデオで観た。
そして「ウ〜ン」と考え込んだ。
気持ちは判るんだけどなあ.....。
大作並みの金をかけてパイソン流の皮肉なギャグ、例えば、盛り上げて盛り上げて盛り上げておいて肩透かしとか、物語をわざとあさっての方角に持って行ってしまうとか、そんなことをやっているのだが、これって金かけてやるべきことか?。パイソンはチープだったからこそ笑えたのだ。どうせ金をかけるのだったら、ストレートにメルヘンを描いたテリー・ギリアムの方が賢明だ。
本作の興業的大失敗のおかげで、テリー・ジョーンズはしばらく映画を撮ることができなかった。96年の久々の監督作『たのしい川べ』は、本人の他、エリック・アイドル、ジョン・クリース、マイケル・ペイリン共演の「フル・モンティ」映画であったが、我が国ではスターチャンネルのみでの放映、ソフト化もされていないという悲しい状況だ(私も未見)。
|