シベリア超特急 日本 1996年 カラー |
いやあ、これはスゴい。久しぶりに見たスカタンであった。 そもそも水野晴郎という人は、昔から笑いの対象であった。どんな映画からでも「病んだ現代社会への作者の込めたメッセージ」を読み取る『水曜ロードショー』での解説はマイ・フェイバリットだった。毎週、弟と一緒に「今日はいったい何てこじつけるだろう?」と楽しみにしていたものだ。 |
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まずキャスト。かたせ梨乃に菊池孝典(註1)はいいとして、これに西田和晃(通称ぼんちゃん)と占野しげるが主役級で並ぶ。誰それって感じだが、二人とも水野さんの弟子なのだ。これに、まったく見たことのない外人俳優数名と、これが映画初出演のフランソワ・モレシャンの娘.....。花がないことこの上ない。 物語はあきらかに『オリエント急行殺人事件』の剽窃。『北北西に進路を取れ』を思わせるタイトルを始めとして、あまりにも多くの映画へのオマージュで溢れているが、それがまったく物語に生かされていない。 |
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謎解きがこれまた複雑怪奇で、本編の中にどんでん返しがいくつもあるのだが、圧巻なのは何といっても、エンドクレジットが終わった後の2回のどんでん返しであろう。 なお、巷で大評判になった(悪い意味で)この「2回のどんでん返し」は、どういうわけか普通のDVDには収録されておらず、これを見るためには限定発売の特別編集版(2枚組、7800円也)を買わなければならない(註2)。これには編集の異なる3本の『シベ超』が収録されており、いったい誰がそのすべてを見るというのだ。水野晴郎のナルシズム、ここに極まれり、という感じだ。 註1 この人はNHK連続テレビ小説『オードリー』で、倉田保昭をモデルにしたタイガー・ウォンを演じていた。 註2 この原稿を書いた後、しばらくして廉価版が発売された。ちくしょう。 |