『羊たちの沈黙』の前作である『レッド・ドラゴン』の映画化であるが、どうしてこんな題名になってしまったのだろうか?
まず、原題の『マンハンター』。これは同時期に製作の『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』との混同を避けるためであるらしい。
次に、邦題の『刑事グラハム/凍りついた欲望』。これは同年にスティーブン・セガールの『刑事ニコ/法の死角』がヒットしたからだと思われる。しかし、グラハムは「刑事」ではない。「FBI捜査官」である。
更に、ビデオ化時の邦題が『レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙』。『羊たちの沈黙』関連であることを自己主張しているが、おいおい、セガールじゃないんだから「沈黙シリーズ」にすることはないだろう。それにレクター博士は沈黙しないよ。神経を逆撫でするようなことをベラベラベラベラよくしゃべるんだあのおっさんは。
そして、本国でのTV放映題が『レッド・ドラゴン/ハンニバル・レクターの追跡』。まるでレクターの逮捕劇であるかのようだが、これも嘘八百。博士はとっくに捕まっておる。
というわけで、いくつものトンチンカンな題名を持つ不遇な作品である。『羊たちの沈黙』のヒットがなければ埋もれてしまったことだろう。2002年に同じラウレンティスが再映画化したので、それと比較されてしまうのも不憫である。
比較してはっきりと判ることがある。マイケル・マンは省略し過ぎだ。特に犯人ダラハイドのエピソードがごっそりと削られている。クライマックスの一つである「レッド・ドラゴンの絵を食べるシーン」も削ってしまったのには呆れてしまった。初見の当時は「予算がなかったので撮れなかったのだろう」とも思ったが、ダラハイドの気持ちを考えれば削るべきではなかった。
なお、本作でレクター博士に扮するのはブライアン・コックス(左写真下)。こういう飄々としたレクターもアリだと思う。
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