子供の頃、『リオ・ブラボー』を観た時に、
「なんて脚の綺麗な人なんだろう」
と溜息を洩らしたことがあった。その脚の持ち主こそ、アンジー・ディッキンソンである。後にJFKの愛人だったことを知り、なるほど、彼女ほどの美貌と容姿なれば大統領が声をかけて当然、と大いに納得したものだ。
しかし、そんな彼女も作品的にはあまり恵まれていなかった。『リオ・ブラボー』を除けば『オーシャンと11人の仲間』と『殺人者たち』があるばかりだ。バート・バカラックと結婚し、事実上引退した彼女だったが、やがて破局。既に43歳になっていた彼女が、女優として再起を駆けたのが本作である。裸身も惜しまない体当たりの演技が評判となり、彼女の代表作となった。
内容は30年代のアメリカで活躍した実在の強盗ファミリー、バーカー一家をモデルにした「熟女版『俺たちに明日はない』」である。
ロジャー・コーマンという人はどういうわけかバーカー一家が大好きで、シェリー・ウィンターズがママに扮した『血まみれギャング・ママ』(註1)、ジョナサン・デミが監督した『クレイジー・ママ』、そして本作と、実に3度も映画化している。いずれもまずまずの出来であるが、面白さでは本作がダントツだ。そりゃあシェリーおばさんよりも、アンジーの姐御が暴れまわった方が観客は嬉しいよな。しかも、息子たちは娘に改変されていて、この娘たちも脱ぎまくりハメまくる。さすがコーマン御大。観客が何を観たいのかを知り尽くしている。
なお、本作は87年に続編が作られた。姐御は56歳で、さすがに見る影もないが、それでも56歳には見えない若作りではあった(註2)。
註1 若き日のロバート・デニーロがシンナー中毒のバカ息子を好演していることでカルト・ムービーになっている。
註2 ただ、監督が悪名高きジム・ウィノースキーなので、中身はヘロヘロ。これは観ない方がよい。
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