「『プライベート・ライアン』のオープニングの20分が2時間も続く映画」だと聞いていたので覚悟はしていた。しかし、そんな私でも2時間も続くリアルで過酷な市街戦は辛かった。
リアルにもほどがある。
現実の戦争を体感したかのような気分になる。後味は極めて悪い。反戦教育にはもってこいの作品である。
ところが、製作者のブラッカイマーはこんなことをほざいておる。
「自分の命以上に他人の命を気遣う男たちの同胞愛の物語を語りたいと私はかねがね思っていたが、それはまさに、ここに登場する兵士たちのやったことだった。彼らには、自分が助かるよりも仲間が生きて帰郷することの方が大切なんだ。それは戦時下のヒロイズムであり、どんな映画にとっても力強い題材だ」
この映画を観て、そんなこと思うかね?。
私には「仲間が生きて帰郷すること」に固執したばかりに傷口を広げてしまった愚か者しか見えてこないのだが.....。
本作は実話の映画化である。
ソマリアに内政干渉した米軍が、読みの甘い作戦が故にドツボへとハマっていく物語。たった1時間で済む筈だった作戦が、15時間にも及ぶ市街戦へと発展する様は、あまり関係のない日本に住む私としては「アホか」としか思えない。
米軍幹部のトンチキぶりの罪は重い。米兵19人の死者に対して、ソマリア人はなんと1000人。これだけ大量に虐殺しておきながら「ヒロイズム」が聞いて呆れる。
更に酷いのが、ソマリア人の描かれ方。まるでゾンビのように描かれているのだ。銃器を持って走って襲い掛かってくるところなど、まさに『ナイトメア・シティ』のアレの如き。一瞬、パロディかと思ってしまった。
結局、本作は「ゾンビ映画」として観ることで、初めて娯楽に昇華することができる。そうでもしなきゃ、腹の虫が収まらないよ。現実に1000人も死んでんだからさ、1000人も。
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