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第27話 萎びたポコチンのバラード

 地響きを立てて巨大なポコチンが倒れこんだ。
 切り裂かれた傷口からは大量に血があふれ出し、あたり一面は血の海と化した。
 その血の海に横たわるようにしていた直径2メートル、全長50メートルの巨大なポコチンは、見る見るうちにしおれ、ものの5秒とかからないうちに、まるで萎びたナスのようになってしまった。つい先ほどまで唸りを上げてむしゃぶろうに襲いかかって来ていたのがまるで嘘のようだ。
 むしゃぶろうは止めを刺すべくビンラディン(本名:チンポコ辰五郎)に近づいて行った。
 多量の出血により、ビンラディン(通称:チンポコの辰)の表情からも血の気はなく、もはや再び立ち上がる精気もなくなっていた。ビンラディン(俗称:チン辰)は、わずかに顔を横に向けると、静かに一つ息を吐いた。
 それを見て、むしゃぶろうは持っていた匕首を懐にしまった。
 人生ははかない。チンポコもはかない。
 むしゃぶろうは人間のはかなさを思った。
 きっとこの男も夢や希望もあったことだろう。が、今となってはそれらを叶える術はない。
「俺は勝った。生きのびた。が、その代わり、自分はこの男からすべてを奪い取ってしまった。俺もいつかはこの男のようにすべてを奪い取られるときが来るであろう。それははぐれ者の宿命であり、戦国の世の慣わしでもある。だが、・・・・哀れだ。」
 むしゃぶろうは可笑しかった。運命や宿命、それらに操られるように生きている人間に何の価値があろうか。
 価値などない。生まれて来て死んで、それで終わり。ただそれだけのこと。努力をしようが我慢をしようが、泣こうが叫ぼうが、悲しもうが苦しもうが、結果は同じ。ただ死ぬだけだ。
 この男のように。
 むしゃぶろうはしゃがみ込み、ビンラディンの顔を覗き込んだ。
「山田よ、何か言い残すことはないか?」
 むしゃぶろうにはこの男に対する優しさはない。少しでも安らかに眠れるように言い残したことがあるなら聞いてやろうといった配慮はない。ただ、死んでいく男が、今まさにこの世を去ろうとしている人間が、最後の最後に、いったい何を言うものなのか興味があっただけだ。
 ビンラディンは、力を振り絞って口を開いた。そして言った。
「山田じゃねえ」

つづく