ブラッドフォードの公営アパートに住む独り身の機械工、ゾーイ・ウェイド(40)は姉御肌の魅力的な女性だった。これまでに色目を使う男は何人もいたが、身持ちが堅い彼女は簡単にはなびかなかった。
かつての隣人、ジェイムス・ポラード(26)も色目を使った一人だった。果敢にアタックするも「何、この小僧?」ってな感じであっさりと袖にされてしまう。それでもポラードは諦めなかった。いざ手篭めにしてしまえば、なびいてくるのではなかろうか? かくしてポラードはゾーイを強姦することを決意した。
この辺りの幼稚な発想が中崎タツヤの漫画に出て来る高校生のようで、とてもイタイのだが、とにかく1982年1月、ポラードはゾーイのアパートに侵入し、彼女をナイフで脅して強姦した。そして、もう自分の女になったと思い込んだのだろうな。彼女に対してこう云い放った。
「警察に通報したら、お前を殺すぞ」
ところがどっこい、ゾーイはあっさりと警察に通報した。かくして、ポラードには4年6ケ月の刑が云い渡されたのである。ポラードは「裏切られた」と思ったことだろう。だが、それは裏切りでもなんでもないんだよ。彼女はお前の女になったわけではないのだから。
16ケ月後の1984年6月13日、釈放されたポラードは、その足でバスに乗ってゾーイのアパートへと向かった。彼の心の中には「復讐」の一文字しかなかった。そして、前回と同様にナイフで脅して強姦し、絞殺した後に、証拠を隠滅するためにアパートに火を放った。だが、誰の犯行であるかは歴然である。間もなくポラードは逮捕された。
かくして逮捕されたジェイムス・ポラードは、殺人罪で有罪となり、終身刑を宣告された。その際に少なくとも20年は仮釈放は認められるべきでない旨が付言されている。
(2012年11月2日/岸田裁月)
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