ロベルト・スッコは1962年4月3日、ヴェネツィアのメストレで生まれた。父親は警察官だった。その少年時代について詳しいことは判っていない。
彼が初めて殺人を犯したのは1981年4月9日、19歳になって間もない時のことだった。まず母親を刃物で刺し殺し、次いで父親を絞め殺したのだ。理由は「車を貸してくれなかったから」。如何にも短絡的な犯行だ。
その後、遺体を浴槽に隠したスッコは、父親の拳銃を奪って逃走するも、翌日にはあっさりと捕まってしまう。そして、精神異常と診断されて、精神医療施設に収容されたのだった。
5年後の1986年5月15日、スッコは施設から脱走し、フランスに高飛びする。そして、逃げ延びるためにありとあらゆる犯罪に手を染める。窃盗は云うに及ばず、強盗、誘拐、カージャック。時には強姦した少女を殺してしまうことさえあった。フランス、スイス、イタリアを股に掛けて逃げ回り、各地で少なくとも5人は殺害している。うちの2人は彼を追いつめた警官だった。
1988年2月28日、スッコは故郷のメストレで遂に逮捕された。3月1日には拘置所からの脱走を企てるが、屋根から転げ落ちて失敗に終わる。もはやこれまでと観念したのだろうか。5月23日に独房の中で自殺した。26歳だった。
スッコが自殺したその年、フランスの劇作家ベルナール=マリ・コルテスがスッコの生涯をモチーフにした戯曲『ロベルト・ズッコ』(「Succo」ではなく「Zucco」)を発表した。我が国でも堤真一主演で上演されている。
また、2001年にはパスカル・フロマンによるノンフィクションを原作にした映画『ロベルト・スッコ』が製作されている。監督は『倦怠』のセドリック・カーンである。
筆者はいずれも未見だが、評判は上々のようだ。
(2010年12月19日/岸田裁月) |