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ドクター・グレノン・エングルマン
Dr. Glennon Engleman
a.k.a. The Killing Dentist (アメリカ)



エングルマンに関する著作

 ミズーリ州セントルイス生まれの歯科医、ドクター・グレノン・エングルマンにはもう一つの顔があった。冷酷な殺人者としての顔である。彼は20年以上にも渡って保険金詐欺を繰り返していたのだ。犠牲者の数は7人とされているが、犯行の期間を考慮すれば、こんなものではないとの声もある。一説には28人とも云われている。

 最初の殺人は1958年12月に遡る。ジェイムス・ブラックがセントルイス美術館のそばで何者かに射殺されたのだ。彼は当時、ドクター・エングルマンの先妻ルースと結婚していた。そして、彼女が保険金6万4千ドルを受け取り、うち2万ドルをエングルマンの事業に投資していたのである。つまり、2人は共犯ということになる。

 1963年9月26日には、エングルマンのビジネス・パートナー、エリック・フレイがダイナマイトで爆死した。しかし、事件は事故として扱われた。フレイの妻、サンディーは保険金のすべてをエングルマンの事業に投資している。如何にも不自然だが、当時は疑う者はいなかった。

 1976年9月5日にはピーター・ハームがパシフィックで射殺された。同行していた彼の妻はエングルマンのかつての助手だった。どうやら、この歯科医は女性をたらし込む術に長けていたようだ。

 1977年11月にはアーサー・ガスウェル夫妻がエドワーズヴィル近郊の自宅で射殺された。1979年3月31日には息子のロン・ガスウェルも射殺された。この3件にはロンの妻、バーバラが関与していた。彼女はエングルマンとは旧知の仲だった。ちなみに、彼女は夫の殺害の容疑でのみ裁かれて、50年の刑が下されている。

 1980年1月14日の最後の殺人は保険金目当てではない。ソフィー・バレーラはエングルマンの歯科クリニックのオーナーだった。彼女は1万4千ドルの貸金を催促したために、車ごと爆破されたのだ。

 1ケ月後の2月24日、エングルマンは逮捕された。とどまることを知らない彼の殺人遍歴にルース、すなわち最初の犠牲者の妻が恐れをなし、警察に出頭したのである。そして、彼女の協力によりエングルマンとの会話が録音されて、遂に逮捕されるに至ったのだ。
 司法取引に応じたエングルマンは、ソフィー・バレーラとガスウェル夫妻の殺害を認め、それぞれについて終身刑を云い渡された。そして、1999年に獄死した。

(2009年4月21日/岸田裁月) 


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)


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