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ブライアン・ダイアー
Bryan A. Dyer (アメリカ)


 1980年9月22日月曜日、ボストンのボーリング場「ブライトン・ボール」での出来事である。その日はピンセッターの点検日だった。整備員が現れたのは午前8時のことだ。ところが、今日はいつもとは様子が違う。場内に誰もいないのだ。どうしちゃったのかなと事務所を覗いて驚いた。金庫が開いたままで、札ビラが床に散らばっていたのだ。
「強盗だ!」
 整備員の通報により現場に急行した警察官は、レーン裏の作業室に横たわる4人の遺体を発見した。

 ドナルド・ドローニ(支配人)
 ジョージ・ヘイゼルステイン(従業員)
 ブライアン・コーブ(従業員)
 デヴィッド・コーブ(従業員)

 いずれもボーリングのピンで頭を殴られた後に銃で撃たれていた。ブライアン・コーブだけはまだ息をしていたが、病院に運ばれる途中で死亡した。
 犯人はまず3人の従業員を後ろ手にして手錠を掛け、支配人を銃で脅して金庫の番号を聞き出した。そして、支配人もまた後ろ手にして縛り上げた後、金庫を開けて金を奪い、順繰りに殺害したのである。果たして殺す必要があったのだろうか? 如何にも冷酷な犯行だ。
 ちなみに、犯人が奪った金額は4800ドル。小額でも非ず、かといってさほど高額でも非ずという微妙な金額である。4人も殺すリスクを負ってまで奪う金額ではないことは確かだ。

 警察は直ちに被害者の交友関係や従業員を重点的に調べ始めた。4人を殺さなければならなかったのは顔見知りだったからだと踏んだのだ。結果、容疑者リストのトップに名を連ねたのがブライアン・ダイアー(41)だった。彼はかつての従業員で、事件の3日前に復職を願い出ていた。強盗の
前科があり、現在はタクシー運転手をしていたが、車のローンのために首が回らなくなっていた。ところが、事件の直後にローンを完済している。また、3ケ月も滞納していたYMCAの宿代を一括で支払っている。彼の犯行とみて間違いないだろう。

 かくして10月1日にダイアーはサマーヴィルのYMCAで逮捕されたのである。彼が不法に所持していた38口径の銃は弾道検査により凶器と認定された。もはや云い逃れは出来ない。有罪となったダイアーには4回の終身刑が云い渡された。

 なお、この事件が余りにも冷酷だったため、マサチューセッツ州では死刑復活の議論が巻き起こった。1982年の住民投票では賛成が反対を上回り、一旦は死刑制度が復活したが、1984年に最高裁で違憲と判断されて、結局、廃止されたままでいる。

(2009年5月6日/岸田裁月) 


参考文献

『THE ENCYCLOPEDIA OF MASS MURDER』BRIAN LANE & WILFRED GREGG(HEADLINE)


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