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ハルバジャン・ディロン
リチャード・アップルトン

Harbhajan Dhillon & Richard Appleton (イギリス)


 1981年11月22日、ロンドン郊外ヘイズ在住のハルバジャン・ディロン(29)宅で火の手が上がり、焼け跡から夫人のラクバーと3人の娘、ラジンダー(9)とバルウィンダー(8)、そしてパラムジット(6)の遺体が発見された。なお、ディロン夫妻には5人の娘がいたが、他の2人は隣人により救出されている。
 事件後まもなく、主たるハルバジャン・ディロンと、その職場での同僚のリチャード・アップルトン(24)が殺人及び放火の容疑で逮捕された。2人の供述は真っ向から異なる。まず、共犯者たるアップルトンによれば、

「奥さんとお子さんが家の中にいるなんて知りませんでした。私は家の放火だけを頼まれたんです。礼金として500ポンドを受け取りました。
 私は2階でガソリンを撒くように指示されました。云われるままに2階に上がると、なんと奥さんが床に倒れているではありませんか。私は仰天して階下に駆け下り、話が違うじゃないかとディロンに詰め寄りました。すると、彼にこう云われました。お前はもう、どう足掻こうとも共犯者なんだよ、と」

 子供がいたことを知っていたかと訊かれると、

「もちろん、知りませんよ。知っていたら火を放つわけないじゃないですか。奥さんはもう死んでいたんです。あいつが殺したんです。だから、自分の中では罪の意識は低かったんです。だけど、子供たちがいたなんて…。まったく酷い野郎ですよ」

 ところが、ディロンによれば、極悪なのはアップルトンの方だ。

「私は妻の浮気を疑っていました。そこで、同僚のアップルトンに浮気相手の調査と制裁を依頼したのです。その報酬が彼に渡した500ポンドです。
 事件の晩、私は夜勤の予定でしたが、浮気相手が来るかも知れない。私は仕事に出掛けるふりをして、アップルトンと共に家に踏み込みました。
 彼は2階に駆け上がりました。やがて妻の悲鳴が聞こえました。私も駆け上がると、彼は妻の首を絞めていました。私は叫びました。そんなことは頼んでない。私が頼んだのは、浮気相手を懲らしめることだ、と」

 ディロンの供述はナンセンスと云う他ない。てめえの女房が眼前で首を絞められているってえのに「そんなことは頼んでない」と叫んだとさ。わははは。その前に止めんかい! その上、子供たちが寝てるってえのに火を放った件については「アップルトンに強いられた」って、お前に主体性はないんかい?

 なんか余りにもバカバカし過ぎてムカムカして来た。こんなバカ親に殺された娘たちは浮かばれまい。
 結局、ディロンとアップルトンの両名は有罪となり、終身刑を宣告された。つまり、どちらの云い分も信用されなかったというわけだ。

(2009年12月8日/岸田裁月) 


参考文献

『THE ENCYCLOPEDIA OF MASS MURDER』BRIAN LANE & WILFRED GREGG(HEADLINE)


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