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デヴィッド・カーペンター
David Carpenter
a.k.a. The Trailside Killer (アメリカ)



デヴィッド・カーペンター

 1979年8月20日、サンフランシスコ近郊のタマルペイス州立公園のハイキング・コースでエッダ・ケーン(44)の遺体が発見された。全裸の彼女は跪いた状態で頭を撃ち抜かれていた。その姿はあたかも犯人に命乞いしているかのようだった。

 6ケ月後の1980年3月7日、同じ公園でバーバラ・スワーツ(23)の遺体が発見された。彼女もまた跪いた状態で、胸を刺されていた。

トレイルサイド・キラー」と命名された犯人の3人目の犠牲者はアン・アルダーソン(26)だった。彼女は1980年10月16日にジョギングに出掛けたまま帰って来なかった。そして、翌日に同じ公園で遺体となって発見された。頭を撃ち抜かれていた。

 1980年11月27日にはシャウナ・メイ(25)が、やはりサンフランシスコ近郊のポイント・レイズ公園に出掛けたまま行方不明になった。2日後に彼女の遺体が埋められた状態で発見されたわけだが、その隣にはダイアン・オコンネル(22)の遺体が並んでいた。彼女もまた数週間前から行方不明になっていた。共に頭を撃たれていた。

 間もなく同公園内の別の場所から更なる2つの遺体が発見された。リチャード・ストワーズ(19)とシンシア・モアランド(18)。このカップルは9月から行方不明になっていた。
 平和な公園から遺体が続々と発掘される事態にサンフランシスコ市民は震え上がった。それはゾディアックの再来だった。否。それ以上だ。ゾディアックは単なるハッタリ野郎に過ぎなかったが、このたびは既に7人も殺しているのだ。

 明けて1981年3月29日にはサンタクルーズ近郊のヘンリー・カウエル州立公園で、スティーヴン・ハートルエレン・ハンセンが銃撃された。犯人の目的は強姦だった。しかし、抵抗されると直ちにエレンを射殺した。極めて身勝手且つ冷酷な犯行だ。スティーヴンも首や眼を撃たれたが、幸いにも一命は取り留めた。そして、彼の証言に基づき犯人の似顔絵が作成された。

 1ケ月後の5月1日、 サンフランシスコのプリント・ショップに勤務するヘザー・スキャッグス(22)が数日前から行方不明になっていることが判明した。同僚の男の家に中古車を貰い受けに出掛けたっきり帰って来ないのだ。警察は直ちにその男を尋問した。デヴィッド・カーペンター(51)。件の似顔絵にそっくりの男だった。また、彼はスティーヴンが襲われた現場で目撃された「小さな赤い外車」も所有していた。

 カーペンターの過去を洗った捜査官は眼を丸くした。強姦の常習犯だったのだ。これまでに何度も服役している。クリーブランドでは4人の仲間と共に脱獄を企てたこともある。また、彼はゾディアック事件の容疑者の1人でもあった。指紋と筆跡が異なるために容疑者リストから外されたのだ。ホンボシはこいつに違いない。かくしてデヴィッド・カーペンターは逮捕された。5月14日のことである。

 その10日後、ヘザー・スキャッグスの遺体がサンタクルーズ近郊のビッグベイジン・レッドウッド州立公園で発見された。凶器はスティーヴンとエレンを撃ったのと同じ銃だ。ところが、その銃はカーペンターの自宅からは発見されなかった。それもその筈、カーペンターは凶器の銃を仲間の強盗に売ってしまっていたのだ。間もなくそのことが別の強盗事件で明らかとなり、警察は遂に物証を掴んだのである。

 カーペンターはまずエレン・ハンセンとヘザー・スキャッグス殺害の容疑で裁かれで有罪となり、死刑を云い渡された。その際にディオン・モロー判事はこのように付言している。
「被告の生涯は想像を越えた暴力の連続だった。私はこの言葉で裁判を締め括らなければならない。死刑を下さなければならないケースがあるとすれば、これがそれだ」
 私もそう思う。

 なお、カーペンターはその後、アン・アルダーソン、シャウナ・メイ、ダイアン・オコンネル、リチャード・ストワーズ、シンシア・モアランド殺害の容疑でも有罪になっている。現在もなおサン・クエンティンの死刑囚監房に収容されている模様である。

 なお、彼はこの他にも1980年6月4日に遺体が発見されたアンナ・メンジヴァスを殺害したことが疑われている。この件は当初は「トレイルサイド・キラー」の犯行とは思われてはいなかったのだが、後に彼女がカーペンターのガールフレンドだったことが発覚したのだ。これも彼の犯行ならば、少なくとも10人殺害したことになる。まさに死刑が相当の男である。

(2009年4月15日/岸田裁月) 


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)
『SERIAL KILLERS』JOYCE ROBINS & PETER ARNOLD(CHANCELLOR PRESS)


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