ペリー・スミス |
リチャード・ヒコック(ディック) ペリー・スミス |
そもそもの発端はフロイド・ウェルズが同房のリチャード・ヒコック(通称ディック)に語った「ガセネタ」だった。2人はカンザス州立刑務所に服役していた。ウェルズ曰く、 |
クラター一家 |
1959年11月15日深夜、ディックとペリーの両名はカンザス州ホルカムのクラター宅に侵入した。裏口のドアには鍵が掛かっていなかった。中に入ると、そこはハーバート・クラターの事務所だった。この時点でガセネタだと気づくべきである。現金を持っていないから鍵を掛けていないのだ。 |
ペリー・スミスとトルーマン・カポーティ |
2人は息子のケニヨン(15)と娘のナンシー(16)を叩き起こすと、両親と共に浴室に閉じ込め、部屋という部屋を金庫を求めて探し回った。この時のエピソードが事件の核心に触れている。ペリーは述懐する。 |
映画『冷血』撮影現場のカポーティ |
翌日にも全国的に報道されたこの一家惨殺事件に興味を抱く一人の作家がいた。異能にして異形で知られるトルーマン・カポーティである。早々に現地に赴いた彼は精力的に事件の背景を取材する。そして、逮捕されたペリー・スミスと対面することで、格好の題材を得たことを確信するのだった。かくして6年もの歳月を経て完成されたノンフィクション・ノヴェル『冷血』は、カポーティに更なる名声を齎すことになるのだが、それはまた後の話。時計を彼らが逮捕される前に戻そう。 (2008年9月30日/岸田裁月) |
参考文献 |
『冷血』トルーマン・カポーティ著(新潮社) |