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マイケル・クェリペル
Michael Queripel (イギリス)



凶器のティーマーカー

 1955年4月30日、ロンドン郊外にあるポッターズ・バー・ゴルフコースの17番ティー付近の草むらで女性の遺体が発見された。昨日から行方不明になっていたエリザベス・カレル(46)だった。彼女は傍らに転がる鉄製のティーマーカーで何度も殴打され、挙げ句はストッキングで絞殺されていた。血みどろのティーマーカーには掌紋がはっきりと残されていた。

 前科者のファイルには掌紋の持ち主はいなかった。そこでポッターズ・バーの会員や従業員を中心に、近隣の住人約9000人の掌紋を採取、一人ずつ照合した結果、4ケ月後に遂に持ち主が割れた。マイケル・クェリペル17歳。未成年者の地方公務員が下手人だったことに英国中は騒然となった。

 逮捕されたクェルペルは、当初は「遺体を発見したが怖くなって逃げた。その時に凶器に触れてしまった」などと弁明していたが、無理があることに気づいたのだろう。やがて犯行を認めた。

「あの日は偏頭痛がひどかったので、静めようとゴルフコースを歩いていました。するとカレル夫人が眼に入りました。他には誰もいません。気がついたら私は彼女を押し倒していました。抵抗されたのでティーマーカーで繰り返し殴りつけました。それでも彼女は抵抗をやめません。このままでは誰かに見られてしまう。ストッキングで首をきつく締め上げると、ようやく彼女は動かなくなりました。私は走って逃げ帰り、衣服についた血を親に説明するために、カミソリで自分の腕を切りました」

 つまり性衝動に駆られた犯行だったのである。

 法廷でのクェリペルは自ら進んで有罪を申し立てたが、これは弁護人の入れ知恵だろう。このことと未成年であることが斟酌されて、不定期刑という極めて寛容な判決が下された。

(2008年7月24日/岸田裁月) 


参考文献

『殺人紳士録』J・H・H・ゴート&ロビン・オーデル著(中央アート出版社)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)


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