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ポール・オージェロン
Paul Orgeron (アメリカ



事件を報じる新聞

 1959年9月15日、テキサス州ヒューストンにあるエドガー・アラン・ポー・エレメンタリー・スクールでの出来事である。午前10時頃、一人の男が息子を編入させるためにやって来た。物静かな感じの男である。息子も終始押し黙っていた。

「最近、オクラホマから引っ越して来たんです。今日からでもお願いします」
「今日からは無理ですね。まず、お子さんの出生証明書と健康診断書をお持ち下さい。それがなければ手続きは出来ません」
「ああ、そうなんですか。判りました。明日持って来ます」

 親子はすんなりと帰って行ったが、数分後には戻って来た。さっきは持っていなかったスーツケースを提げている。校庭では教師のパトリシア・ジョンソンが子供たちに遊戯の指導をしていた。
「先生!」
 男は彼女に声をかけた。
「子供たちをここに集めて下さい!」
 彼女は直感的に「ヤバい人」だと思った。立ち去るように命じると、神の意志がどうとかパワーがどうとか云っている。やっぱり「ヤバい人」だわ。
「みんな、あの人に近づいちゃだめよ!」
 うちの一人に守衛を呼びに行かせた。すると「ヤバい人」は近づいて来て、彼女に手紙を手渡した。
「とにかくこれを読んで下さい」
 手紙にはヘタクソな字でこのように書かれていた。

「どうか興奮しないで下さい。このスーツケースには高性能の爆薬が詰まっています。それはそれはすごい威力です。私はまわりの者を殺したくはありません。私の息子も死んでしまうのですから。だからどうか私にボタンを押させないで下さい」

 彼はスーツケースを持ち上げると、底にあるボタンを指し示した。それは市販のドアベルだった。
「これを地面に置くと、ボタンが押されて爆発します」
 そして、底の片側を自分の靴の上に乗せてスーツケースを置いた。つまり、彼が足を抜くと爆発するのだ。彼女は青醒めた。
「みんな、離れて! 教室に戻りなさい!」

 まもなく守衛がやって来た。
「いったいどうしたんです?」
「この男が爆薬を持っているって云うんです」
「爆薬? まさか!」
「私もまさかとは思うんですけど…」
 すると、男が口を開いた。
「これにはパワーが詰まっているんだ。これこそが神の意志なのだ」
「何云ってるんだ、あんた?」
 守衛は男に近づく。
「近づくな! 近づいてはいけない! さもなくばバラバラに吹き飛ぶぞ!」
「だから、さっきから何を云ってるんだよ!」
 その肩を掴むと、男は足を抜いた。

 以下の者がバラバラになった。

 ポール・オージェロン(犯人・47歳)
 ダスティ・オージェロン(犯人の息子・7歳)
 ジョン・モンゴメリー(守衛・56歳)
 ジェニー・コルター(教師・54歳)
 ウィリアム・ホウズ(生徒・7歳)
 ジョン・フィッチ(生徒・7歳)

 パトリシア・ジョンソンは生徒を退避させていたために助かったが、事情を知らない他の教師と生徒が巻き込まれてしまったのだ。

 警察の調べによれば、ポール・オージェロンは元金庫破りのタイル職人で、梅毒を患っており、オツムがかなりイカれていた。ダスティの母親は彼と2度離婚している。DVが原因だ。ヒューストンに来る途中でニューメキシコに寄り、大量のダイナマイトを入手している。校門脇に停められていた彼のステーションワゴンには150本ものダイナマイトが残されていたというから、なんともはや物騒なはなしだ。
 問題はその動機だが、当人がバラバラになっちまっているので知るすべもない。

(2008年9月21日/岸田裁月) 


参考文献

『THE ENCYCLOPEDIA OF MASS MURDER』BRIAN LANE & WILFRED GREGG(HEADLINE)


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