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ジェイムス・マッケイ
James McKay (イギリス)


 

 肉親の遺体をバラバラに切り刻んだ例は少ない。ましてや母親をバラバラにした例など、このジェイムス・マッケイのケースぐらいではないだろうか。少なくとも私の記憶には他にない。極めて稀な事件である。

 1927年10月15日早朝、スコットランド最大の都市グラスゴーを流れるクライド川の岸辺で、2人の男が艀を引いていた。すると、川上からどぶらこどんぶらこを大きな桃が、否、大きな包みが流れて来た。興味本位で引き上げて、中身を開けて驚いた。

 頭   1
 脚   2
 太腿  1
 左手首 1

 頭は叩き潰され、片側は焼け焦げていた。高齢の女性である。また、左手首は薬指が切り落とされていた。指輪を盗るためだと思われる(包みの中を念入りに探すと、指は出て来たが指輪はなかった)。
 以上の他にも、縦縞のシャツ、エプロン、丈の短いカーテン、10月9日付の地元紙が入っていた。

 その日のうちにもバラバラ死体がアグネス・アーバックルであることが判明し、翌日には息子のジェイムス・マッケイ(37)が逮捕された。彼女の残りの遺体は、マッケイ宅の石炭入れの中に隠されていた。

 マッケイが下手人であることは明らかだ。10月12日、マッケイの知人のジョン・ラッセルは、アーバックル夫人の家からマッケイの下宿まで大型トランクを運ぶのを手伝っている。もちろんラッセルは中身を知らない。ただ、とてつもなく重かったことを覚えているだけだ。
 翌日、髪を振り乱し、疲れきった様子のマッケイが近所の人々に目撃されている。おそらく徹夜で遺体を解体していたのだろう。そして、梱包して川に捨てたのだ。

 動機は財産目当てだったと思われる。しかし、母親の指輪を奪うためにその指を切断するとは如何にも異常だ。弁護人は当然ながら精神異常を主張した。
「生みの親を殺して亡骸を切り刻み、その入れ歯をはずして金に替えようとする男が、果たしてマトモでしょうか?」
 その通りだ。キチガイ以外のなにものでもない。しかし、陪審はこの主張を認めず、マッケイは1928年1月24日に絞首刑に処された。

(2007年10月6日/岸田裁月) 


参考文献

『死体処理法』ブライアン・レーン著(二見書房)


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