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ジョージ・ジョセフ・スミス
George Joseph Smith
a.k.a. The Brides in the Bath Murders (イギリス)



スミスと最初の「浴槽の花嫁」

「浴槽の花嫁事件」の主人公、ジョージ・ジョセフ・スミスは典型的な女たらしである。様々な偽名で少なくとも7人の女性と結婚し、うち3人が浴槽で溺死している。

 最初の花嫁はベアトリス・マンディ。1910年8月26日にスミスと結婚し、1年ほどの別居を経た後、1912年7月13日に浴槽で溺死。彼女には2500ポンドの預金があった。別居したのはその金がスミスの思うようにならなかったからだ。彼女が溺死したのはスミスに有利な遺言状を作成した直後だった。
 当時の英国では風呂はまだ普及していなかった。だからスミスはわざわざ浴槽を金物屋で値切って買い求め、用がすむと「ほとんど未使用」と偽って返品した。その中で嫁が死んでいるってえのに、太え野郎である。

 2人目はアリス・バーナム。1913年11月4日に結婚した彼女は、500ポンドの生命保険をかけられた直後の12月12日に浴槽で溺死。この時はわざわざ風呂付きのアパートを探し求め、出て行く際には大家に向って「この人殺し!」と毒づいたってんだから、まったく太え野郎である。

 3人目のマーガレット・ロフティは1914年12月17日に結婚し、翌日にいきなり浴槽で溺死。彼女には700ポンドの生命保険がかけられていた。彼女が湯舟に浸かっている間、スミスは居間のオルガンで『主よ、汝のみもとへ』を弾いていたってんだから、なかなかの粋人でもある。

 スミスの犯行が明るみになったのは、マーガレットの事件を新聞で知った2人目の嫁の父親が警察に訴え出たからだ。
「うちの娘の死に方にあまりにも似ている。名前は違うが、この夫は同一人物ではないか?」
 調べた結果、確かに同じ人物だった。殺人の疑いが濃厚である。しかし、問題なのは殺害方法だ。3件とも「癲癇の発作に基づく事故死」と認定されている。これを覆さなければならないのだ。入浴中の成人女性を事故死のように溺死させることなど出来るのだろうか?
 実験の結果、いとも簡単なことが判明した。膝を押さえて足を持ち上げればいいのだ。こうすると狭い浴槽では抵抗できない。ブクブクブクとすぐに意識を失ってしまう。

 かくして死刑を宣告されたスミスは、1915年8月13日に絞首刑により処刑された。絞首台に上るまで「怖い怖い」と泣き叫んで大変だったそうである。


参考文献

『殺人紳士録』J・H・H・ゴート&ロビン・オーデル著(中央アート出版社)
『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)
『世界犯罪百科全書』オリヴァー・サイリャックス著(原書房)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)


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