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リチャード・ラミレス
Richard Ramirez
a.k.a. The Night Stalker (アメリカ)



リチャード・ラミレス

 1984年6月から翌8月にかけてロサンゼルス市民を震撼させた連続殺人事件はプロファイラー泣かせだった。通常の連続殺人犯には犠牲者に一定のパターンがある。例えば、髪の長い女性だとか、売春婦だとか、あるいは少年だとか。ところが、この犯人にはそれがない。なにしろ最初の犠牲者は79歳の老婆だったのだ。侵入した家に少年がいれば、その肛門を犯している。つまり誰でもよかったのである。

 犠牲者に共通点があるとすれば「侵入しやすい家に住んでいた」ということなのだろう。その手口は毎度同じで、寝室に忍び込み、男が寝ていれば22口径で頭を撃つ。他に女や少年がいれば犯して殺す。たまに殺さないこともあったが、そこらへんは適当だ。金品を奪うこともあれば奪わないこともある。やはりこれも適当である。目的が強姦なのか強盗なのか今一つ判らない。
 殺さないこともあったから、大凡の人相は割れていた。背が高く痩せたヒスパニック系で歯はボロボロ、異臭がしたという。おそらくシャブ中である。風呂に入っていないから臭うのだ。

ナイト・ストーカー=夜這い男」と呼ばれたこの男が逮捕されたのは、導入されたばかりのコンピューター指紋データベースのおかげである。犠牲者の証言により犯人がオレンジ色のトヨタに乗っていたことが判明、乗り捨てられていた同車から採取した指紋から「リチャード・ラミレス」の名がはじき出されたのである。思った通り、シャブ中の侵入窃盗常習犯だった。

 ラミレスの顔写真はさっそく翌日の朝刊に掲載された。甘いものに眼がないラミレスは(だから歯がボロボロ)、その日は朝食としてドーナツ1袋とコーラを買った。ところが、なんか様子がいつもと違う。まわりの客がじろじろと俺様の顔を見ていやがる。なんだってんだい、え? なにげに新聞に眼をやると、なんと俺様の顔がでかでかと! すわ、一大事。脱兎の如く走り去ったラミレスの背後から叫び声が聞こえた。
「やっぱりあいつだ! 警察を呼べ!」
 ヒスパニック系居住区に逃げ込んだラミレスだったが一難去ってまた一難。2人のやんちゃな若者に捕まってしまった。
「てめえのようなふてえ輩がいるからオレたちが余計に差別されるんでえ」
 ぼふっ。
「なにがナイト・ストーカーだ、このオカマがあ」
 ごふっ。
 警官が駆けつけた時にはラミレスは近隣住人から寄ってたかって殴る蹴るのリンチに遭っていた。まるで映画『M』のような光景である。
「た、たすけてくらはい、おまわりはん。げふっ。おいられす。ぐふっ。しゃしんのおいられす。べふっ。ころされるまえにつかまえてくらはい。ぶふっ」
 ど〜しよっかな〜と警官がじらしたかどうかは知らないが、とにかくラミレスは逮捕された。

 その後、夜這い野郎のラミレスは弁護士の指導で義歯をはめて整髪したので「カッコイイ」と全国のノータリンどものアイドルとなった。悪魔崇拝者であることを公言し、悪魔的パフォーマンスで話題を集めたが、おそらくこれも弁護人がやらせていたのである。責任無能力に持ち込むつもりだったのだろう。「やらせられている」という意味で亀田三兄弟と同じである。
 結局、弁護人の策略は実らず、リチャード・ラミレスは13件の殺人と5件の殺人未遂、その他さまざまな罪で有罪となり、死刑を宣告された。現在、順番待ちの真っ最中である。


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)
週刊マーダー・ケースブック59(ディアゴスティーニ)
『猟奇連続殺人の系譜』コリン・ウィルソン著(青弓社)
『世界殺人者名鑑』タイムライフ編(同朋舎出版)
『世界犯罪百科全書』オリヴァー・サイリャックス著(原書房)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)


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