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エドワード・モレイ
Edward Morey
a.k.a. The Human Glove Murder (オーストラリア)


 

「人間の皮膚の手袋」ばかりがクローズアップされる事件だが、謎が多くて複雑怪奇だ。

 1933年のクリスマスの日、ニューサウスウェールズ州ウォガウォガを流れるマランビジー川で男性の遺体が発見された。1ケ月以上も水に漬かっていたために腐敗が著しく、両手の皮膚も剥がれているので身元の特定は不可能かに思われた。後頭部が激しく損傷しており、これが致命傷である。
 付近一帯を捜索した警察は、やがて川岸に手袋らしきものを発見した。よくよく見ると人間の皮膚ではないか。腐敗によりズルリと剥けた皮膚が遺体とは別に流されたのだ。ジャンケンで負けた(嘘)刑事の一人が嫌々ながらも手にはめて指紋を採取、遺体はようやく浮浪者のパーシー・スミスであることが判明した。
 聞き込みを進めるうちに、近隣に住むエドワード・モレイが容疑者として浮上した。スミスが最後に目撃された際に一緒だったのだ。モレイはシラを切り通したが、その衣服と斧に付着していた血痕が決め手となり逮捕された。

 複雑怪奇なのはここからである。間もなく検察側の証人として予定されていたモンクリーフ・アンダーソンが射殺されたのだ。モレイの裁判はこのために中断された。妻のリリアンによれば、夫は侵入してきた何者かに撃たれたという。しかし、警察は胡散臭いと感じた。というのも、彼女の供述書の筆跡がモレイ宅で発見された2通の恋文(差出人は「セルマ・スミス」)と同じだったのだ。
 やがてモレイの裁判は再開され、リリアンも夫殺しの容疑で起訴されたわけだが、またしてもリリアンは話を複雑にする。パーシー・スミスを殺害したのは夫のモンクリーフであり、夫は銃の暴発による事故死だと云い出したのだ。一方、モレイはというと、リリアン・アンダーソンなどという女性とは一面識もないと答えた。これはいったいどういうことだ?
 思うに、リリアンはモレイに横恋慕していたのではないか? だから偽名で恋文を出したのだ。そして、愛しい人を救うために夫に罪を着せて殺害した。そう考えなければ説明がつかない。リリアンには14歳程度の知能しかなかったことが明らかになっており、あながちありえない話ではない。

 結局、モレイは死刑を宣告されたが、後に執行を猶予された。一方、リリアンは懲役20年に処され、10年後に仮釈放された。


参考文献

『殺人紳士録』J・H・H・ゴート&ロビン・オーデル著(中央アート出版社)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)


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