ユナイテッド航空629便の墜落現場
ジョン・グレアム
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1955年11月1日、デンバー空港を飛び立ったポートランド行きのユナイテッド航空629便が飛行中に爆発、コロラド州北部の平原に墜落し、乗客乗務員あわせて44名全員が死亡した。当初は事故だと思われていたが、間もなく貨物室に爆発物が仕掛けられていたことが判明した。
乗客の荷物の中で粉々になっていたのはデイジー・キング夫人のトランクだけだった。これに爆発物が仕掛けられていた可能性が濃厚である。更に、驚くべきことに、629便が離陸する直前に保険自動販売機で3万7500ドルの生命保険がキング夫人に掛けられていたことが判明した。受取人は息子のジョン・グレアムだった。
不動産投資で成功していたキング夫人は、息子のジョンを少々甘やかしていた。彼が3歳の時に夫に先立たれて、再婚するまでの10年間、孤児院に入れていたことの負い目があったのだろう。4年前、ジョンが19歳の時に勤務先の会社で1000ドルを横領した時も立て替えてあげた。そして、ドライブイン・レストランを買い与えたのだ。
しかし、勤務先の金を横領するような男である。レストラン経営など出来る筈がなく、店は赤字続きだった。そこで保険金詐取を思いつき、店に放火したが失敗した。車をぶつけてみたがダメだった。母もいい加減、馬鹿息子に愛想を尽かし始めていた。そこで母のトランクに26本のダイナマイトを忍ばせてタイマーを作動させたのである。つまり、この男は母を亡きものにするために43名もの無関係な人々を巻き添えにしたのだ。ほとほと呆れた大馬鹿野郎である。
逮捕された馬鹿息子は、自白しては撤回し、自白しては撤回し、自白しては撤回し、自白しては撤回し、ぐだぐだぐだぐだとダメっぷりを遺憾なく発揮した後、自殺も試みたが、それさえも遂げることが出来なかった。最後の最後まで反省することなく、1957年1月11日にガス室で処刑された。
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