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ゲジーナ・ゴットフリート
Gesina Margaretha Gottfried (ドイツ)


 

 毒殺は女性に与えられた特権的な殺害方法である。そして、彼女たちはひとたびその魅力に取りつかれれば際限なく犯行を繰り返す傾向にある。その典型的事例がゲジーナ・ゴットフリートである。

 魅力的な女性だ
った(らしい)ゲジーナが伴侶として選んだ相手は、男前だが道楽者のミッテンバーグという男だった。両親は反対したが、ゲジーナはそれを押しきり結婚した。1815年のことである。
 ところが、夫婦生活は数年で破綻する。夫の酒量は増すばかりで、夜のお務めが次第にままならなくなった(=ED)のである。日々悶々としたゲジーナはゴットフリートという愛人を作って密通を重ねるうちに夫が邪魔になってきた。そこで、夫の酒瓶に殺鼠剤=砒素を盛り、寿命を大幅にカットした。

 晴れて独り身になったゲジーナだったが、ゴットフリートとの結婚にはまだまだ障碍があった。まず、前夫との間にもうけた2人の子供である。新婚生活に煩わしい子供は必要なし。そこで寿命をカットした。
 更に、ゲジーナの両親が再び結婚に反対した。 彼女は躊躇することなく、両親の寿命もカットした。
 かくして、ようやくゴッドフリートと結婚できたゲジーナだったが、2人だけの生活は予想に反して、それほど楽しいものではなかった。そこで彼の寿命もカットした。勢い余って、義兄の寿命もカットした。ついでに、彼女に岡惚れしていた男の寿命もカットした。カット、カットで、まるで何処かの国の検閲のようである。

 1825年当時のゲジーナは、両親やら夫の遺産を相続して、大邸宅で悠々自適の暮らしを送っていた。ところが、浪費が嵩んで次第に維持費が払えなくなり、銀行に抵当権を実行されて邸宅を手放すハメとなる。落札したのはルムフという実業家だが、お人好しなのが玉に瑕。ゲジーナを追い出すのが忍びなく、そのまま住み込みのメイドとして雇い入れた。
 ところが、その日からルムフの妻や子供たちの具合が次第に悪くなり、28年にはルムフを除いて全滅してしまう。遂にはルムフ自身も悪くなった。さすがにこれはヤバい、ヤバすぎると警察に駆け込み、捜査の結果、彼の食事の中から砒素が検出された。

 法廷に立ったゲジーナは、弁明するどころか、ルムフ一家だけに留まらず少なくとも30人は殺していると誇らしげに語った。そして、殺人からエクスタシーにも似た快感を得ていたことを告白した。
 当然に有罪となったゲジーナは、斧により斬首された。


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)


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