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ゴードン・カミンズ
Gordon Frederick Cummins
a.k.a. The Blackout Ripper (イギリス)



ゴードン・カミンズ

 ゴードン・カミンズは「ブラックアウト・リッパー(灯火管制下の切り裂き魔)」の異名で知られている。彼の犯行は「ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)」によく似ており、故にその異名は適切である。しかし、ジャックが証拠を残さなかったのに対して、カミンズは残しまくりだ。成績表をつけるなら「もっと頑張りましょう」とばってんをつけられてしまう。

 最初の犯行は、ナチスによるロンドン空襲中の出来事だった。1942年2月9日早朝、防空壕の中で、イヴリン・ハミルトン(40)という薬剤師助手が遺体となって発見された。死因は絞殺だった。首に残った掌紋から、犯人は左利きと推測された。

 次の犯行はその翌日のことである。イヴリン・オートリー(35)という売春婦が、仕事場にしていたアパートで殺害された。直接の死因は絞殺だが、遺体は缶切りで無惨に切り刻まれていた。缶切りには指紋が残されていた。しかし、指紋登録科のファイルには該当者はいなかった。

 2月13日には、やはり売春婦のマーガレット・ロウ(42)が、仕事場のアパートで殺害された。このたびは正視できないほど切り刻まれていた。
 ホテル経営者の妻、ドリス・ジュアネット(32)も自宅のアパートで殺害されていた。やはり絞殺された後に切り刻まれていた。
 この晩、犯人は盛り上がってしまったようだ。なんと3人目に手を出したのである。しかし、グレタ・ヘイワードは運が良かった。悲鳴を聞いた通行人が駆けつけたため、犯人は慌てて逃げ出した。よほど慌てたのだろう。犯人は空軍支給の防毒マスクを現場に置き忘れていた。
 それでも懲りない犯人は、なんと4人目に手を出したのだからあきれてしまう。しかし、キャサリン・マルケイも大声で悲鳴をあげたため、犯人は慌てて逃げ出した。またしても空軍支給のベルトを現場に置き忘れていた。
 間抜けであるなあ。
 防毒マスクとベルトには空軍登録番号「525987」がしっかりと明記されていた。該当者はゴードン・カミンズ(28)。その指紋は現場に残されていたものと一致した。

 カミンズは貴族出身であることを自慢するため、仲間内ではからかい半分に「デューク(公爵)」と呼ばれていた。ところが、その実際は慢性の金欠で、被害者から奪った金で遊び歩く情けない男だ。そもそもの動機は金目当てと思われる。それがいつのまにか、女の首を絞めて切り刻むことに性的な悦びを覚えるようになったのだろう。2月13日の彼の行動は、まるで中毒患者のようである。
 かくして死刑を宣告されたカミンズは、1942年6月25日に絞首刑に処された。


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)
『殺人紳士録』J・H・H・ゴート&ロビン・オーデル著(中央アート出版社)
『猟奇連続殺人の系譜』コリン・ウィルソン著(青弓社)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)


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