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レイ&フェイ・コープランド
Ray & Faye Copeland (アメリカ)



レイ&フェイ・コープランド

 さて、今回は高齢化社会に備えて、人類史上、最高齢の死刑カップルの物語である。

 そもそもの発端は、1989年10月にネブラスカ州のテレビ番組『クライム・ストッパー』にかかってきた匿名の電話だった。
「人の骨だよ人の骨」
「薮から棒に何ですか?」
「だから、かくかくしかじか」
「それじゃ判りませんよ」
「見ちまったんだよ、人の骨を」
「はあ?」
 まどろっこしいなあ。俺が話すよ。電話の主はミズーリ州チリコシにあるレイ・コープランド(75)の農場で働いていたところ、その片隅で頭蓋骨やらなんやらの人骨を発見。ぎゃあっと一尺ばかり飛び上がり、明日は我が身と一目散に逃げ出して、こうして電話をかけているのですよ。
 眉唾ものだったが、電話を受けたスタッフは念のために通報した。

 通報を受けた保安官は、かねてから牛取引に関する詐欺容疑でコープランドを捜査していた。そして、共犯者としてジャック・マコーミックを逮捕。この男こそがテレビ局への電話の主だった。詐欺を認めたマコーミックは「人の骨も本当だってば」。半信半疑で捜査令状を取った保安官は、マコーミックの云う通りに、5人分の人骨を掘り当てた。いずれも後頭部を撃たれている。弾道検査により、コープランドが所有する22口径のライフルが凶器と判明した。

 要するに、こういうことだったのだ。まず、足がつかないように流れ者を雇う。そして、彼の名義で銀行口座を開き、小切手を切って牛取引をさせる。ある程度したら不渡りにして、口封じに名義人を消す。マコーミックはまさに消される寸前で逃げ出したのである。
 押収された帳面には、ここ数年間に雇われた者の氏名が記載されていたが、不気味なことに、いくつかの氏名には「×」がつけられていた。この帳面をつけていたのが妻のフェイ・コープランド(69)である。この事実だけでは殺人への関与は認めがたいが、検察は驚くべき証拠を提出した。それは彼女の手による「被害者の衣服で作ったパッチワーク」だった。これが決定的な証拠となり、夫妻はそろって死刑を宣告された。

 犠牲者は5人どころでは済まされないように思えるが、真相はもう明らかになることはない。1993年にレイ・コープランド死亡。刑の執行まで生き存えることは出来なかった。
 一方、フェイ・コープランドは1999年に終身刑に減刑されたが、2003年に死亡。結局、2人とも死刑にはならなかったのだ。


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)


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