ウィリアム・ボーニン
ヴァーノン・バッツ
ジェイムス・マンロー
グレゴリー・マイリー
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「アメリカの田舎は怖い」というのが『悪魔のいけにえ』をはじめとする一連の血みどろ映画を観て育った私の正直な感想である。よそ者というだけで、例えばジョン・ブアマンの『脱出』のように、オカマを掘られて殺されてしまうのである。
サンフランシスコのような都会であっても油断できない。車でフリーウェイを小1時間も行けば、そこはもう田舎同然の荒野なのだ。やっぱりオカマを掘られて殺されてしまうのである。
実際、1972年から80年にかけてのカリフォルニア州には「フリーウェイ・キラー」と呼ばれる鬼畜が幅を利かせていた。犠牲者はみな若い男で、オカマを掘られて殺されていた。チンポコを斬られてしまった者もいた。首を斬られた者もいた。頭蓋骨に釘を打ち込まれた者もいた。耳にアイスピックを突き刺された者もいた。塩酸を飲まされた者もいた。そして路肩に棄てられた。犠牲者は41人にも及んでいた。
1974年、14歳の少年がパーティーから帰宅するためにヒッチハイクをしていた。そして、パーティー客の1人に拾われた。彼は少年を銃で脅してオカマを掘った。しかし、命までは奪わなかった。彼は云った。
「いつもは殺すんだ。だけど、お前はパーティーで一緒だったところを誰かに見られているかも知れない。だから、今回だけは助けてやる」
少年は警察に通報した。犯人はウィリアム・ボーニンという25歳の男だった。彼は1年から15年の不定期刑を宣告され、1978年には釈放された。
ボーニンの釈放後、しばらく休んでいた「フリーウェイ・キラー」がまたもや出没し始めた。そのことをニュースで知った先の少年は、自分を犯したあの男こそが「フリーウェイ・キラー」ではないかと考えた。通報を受けた警察はボーニンをマークした。そして、1980年6月11日、若い男を脅してオカマを掘っているボーニンを現行犯逮捕した。掘られた男は不憫である。警察は彼が拾われるところから尾行していたのだから。
観念したボーニンは「フリーウェイ・キラー」であることを認め、共犯者として22歳のヴァーノン・バッツの名を挙げた。バッツは少なくとも8件の殺人への関与を認めたが、主犯はあくまでボーニンで、自分は催眠術で操られていたと主張した。
更に、ジェイムス・マンローとグレゴリー・マイリーが逮捕された。彼らはここ4ケ月間の共犯者だった。
ボーニンは拘置所であのアンジェロ・ブオーノと同室になり、ボコボコに殴られたそうだが、そんなことはどうでもよろしい。とにかく、10件の殺人と強盗で有罪となり、死刑を宣告された。1996年2月23日に無事に執行されている。
一方、バッツは拘置所で首を吊って自殺した。マンローとマイリーはそれぞれ25年の禁固刑を宣告された。
もう「フリーウェイ・キラー」はいない。でも、アメリカは怖い。油断をすると、オカマを掘られて殺されてしまう。本当である。
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